タカラヅカメモ

全組観劇のライトファンによる宝塚感想置き場。

月組大劇場公演「All for One」/1回目

(B席2階11列下手側)

「スカーレットピンパーネル」からシリアス成分を全部引っこ抜いてお笑いと漫才をぶち込み、ハーレクイン成分を少女マンガ成分に置き換えて歌詞に謎の教育成分を振り掛けたら、多分それが「All for one」。そんな痛快冒険活劇アンドラブコメディ。すごくよかった。脚本家小池修一郎もたまにはやるやん、ていう謎の上から目線モード(演出家小池修一郎は信頼してるけど、脚本家小池修一郎への信頼感は皆無だからね仕方がないね)。

愛希れいかのルイ十四世がさすが元男役の少年ぷりで、若い女の子が無理していることが分かりつつ、なおかつ王の風格がちゃんとある(あと、若ぶっても変にカマトト臭くならない)。若くて頼りないけど、高貴で位が高い。「控えよ」っていう声がヒステリックに響かなくてすごい好き。だからこそ、二幕でダルタニアンとの主従関係が薄れたのが個人的には惜しい。

珠城りょうは尻に敷かれててもかっこいい人じゃないですか。むしろ尻に敷かれた方がかっこいい感さえあるじゃないですか。なので最後までルイーズ上位の関係でよかったと思う。尻に敷かれてても、珠城りょうはちゃんと逆襲するし(強引にキスしときながらすぐに我に返って心底申し訳なさそうに謝る、というのは新鮮でいいキャラクタだった)(そしてその強引さにときめく愛希れいかが可愛い)。

無骨感、が珠城りょうの売りなのかなあ。基本的に忠誠の人なんだけど、時折暴走する……みたいなの似合うよね。ジゴロの役とかは間違ってもさせちゃダメなタイプ。若さがいい感じに抜けて来た頃に、堅物軍人と王女様(相手役の色によっては町娘でも可)とかそういうベタなラブコメが見たい。

美弥るりかは得意の?女たらし。えらく歌が上手く聞こえて驚いた。いや、元々下手な人ではないと思うんだけど、歌い方にもう少し癖があると思ってた。芝居にも癖があると思ってた。今回、妙に素直で、個人的には嬉しかった。何だろ、純粋に役が色物寄りじゃないから……?(十分色物では?)

髭を付けた宇月颯が超絶男前。ちゃんと年長者感がある(これは美弥るりかが若すぎて怖いともいう)。ただ、「さすがはアトス。緻密な作戦だな」みたいに讃えられる割に出たとこ勝負過ぎる作戦なのはどうでしょうねえ……。「アトスにしてはいくらか投げやりな作戦だな」くらい言わせておけばいいのに。

暁千星は初見が多分メリーウィドウで、めちゃくちゃ下手だなこの子、って思った印象が強いんだけど、フォルスタッフ見たら普通にキラキラしたロミオやってたし、もはや全然下手ではなかった。まあ、見たまんま若いんだけど、今回はそれが役にあってる。結構好き。

あとは、中央に一樹マザランと憧花アンヌを配しているのがよかった。話が軽くなり過ぎない。

ジョルジュはもっと大柄で華やかな子を配しても(そう演出しても)良かったんじゃないの、と思わなくもないけど、この方が対比が映えるという判断なのかな。演技がよかった。
沙央くらまがびびるほど美しくて、イイ役。牢屋に入れられた後の捨て台詞大好き。スカート剥ぎ取って踊るとこだけ、ちょっと下着感あり過ぎて痛々しいのでもうちょっと丈伸ばしてあげて欲しい。足を曝け出す=胸を出すよりもはしたない、くらいの時代では?

ちょこちょこ不満はあって、最大の点は「あなたのきょうだいを見つけ出したら、あなたは自由だ」のくだり。やたらと繰り返されるんだけど、なんかちょっと、兄弟に王としての義務を押し付ける感を感じてね。生まれてすぐに捨てられて、王族としての権利も与えられずに育った子に王の義務を押し付けるの?義務と権利はバーターでは?って思っちゃう(だからできれば、もう少しマリア・テレサに一目惚れするとかそういう救済措置が欲しいし、ダルタニアンもちょっとくらい配慮しようぜルイーズも悩もうぜって思う)

あと、やたらと「All for one」と繰り返される銃士隊のスローガン。背中がちょっと痒い。「一人は皆のために~♪」っていう歌詞で歌っちゃうのはどうですかね……個人的にはちょっと……

でもまあ、目立った不満はそれくらいで、あとは笑って流せる。やっぱりコメディってその点がいいな、と思うわけです。チケットと有給休暇が許す限り通いたい、が、次が朝夏まなとの退団公演なのでそこらへん考慮して控えめになるかもしれない。