タカラヅカメモ

全組観劇のライトファンによる宝塚感想置き場。

宙組大劇場公演「神々の土地」「クラシカルビジュー」/8・9回目

午前/午後両方見たので感想まとめたら、めちゃくちゃ長くなった。

・前から気になってたんだけど、「わしら猟に使う弾もない」とか言われてるのに、バンバン無駄弾使うドミトリーくんってどうなの? 何かしらの演出意図があるのかもしれないけど、ドミトリーが無神経な人に見えるのは微妙なのでは。

・ツィンカ突撃の場面、ほとんどのジプシーを取り逃している辺りに(突撃側の)無能感が漂いまくるので、八割くらいはちゃんと殺して欲しい(ゾバールとマキシムだけぎりぎり助かるくらいに)(ちゃんと殺して欲しいっていうとアレだな)。

・任官式の幕は落ちるんじゃなくて、本来は上に上がるものだったらしい(自分の記憶力のダメさ加減に絶望した)。

・「平たく言えば、あなたのご両親への”中傷”だ」がいつも「批判」ではダメなの?って引っかかるんだけど、でもフェリックスってちょっとそういう露悪的な物言いを好みそうなキャラクタなので、「中傷」という言葉をあえて選びそうだと思ったりもする(で、ドミトリーはその度に「まーた、こいつは誤解を招くような振る舞いをわざわざやっとるな」って呆れたり残念がったり(たまに痛快に思ったり)してる気がする)(コンスタンチンは100%善人ベースではらはらしながらフェリックスを見てるんだけど、ドミトリーは面白がってるときもある、みたいな)。

・「正しき国を!」って盛大に歌ってるけど、フェリックスって基本的に「正義」とか「正しさ」といったものに価値を認めてなくて、それらの普遍性に疑いのない人間を鼻で笑うタイプの人じゃないですか。彼が戴く正義はあくまで、自分(と近い人々にとっての限定的な)「正義」でしかないし、そうであることをフェリックスははっきりと認識している。そしてその「正義」を押し通すことの是非、を一切考慮してないし、する気がない(というか、その「正義」が、他者にとっての「正義」ではない、ということを十分に理解した上で、「僕はこれを正しいと思っている/だから押し通す/何か問題が?」って迷いがない)(※)。

(※ 異論があるなら、「自分の正義」を持ち出して来い!(叩き潰してやる)っていうのがフェリックスの考え方の基本で、それはまあ傲慢な考えといえばそうなんだけど、だからこそ「自分たちの正義」を後生大事に抱えて、それが通じる狭い範囲に閉じ篭って出て来ようとしない(他者の「正義」を認識しようとしない/自分たち「だけ」が正しいと思っている)皇后とその一家が嫌いだし、価値を認められないんだと思う)

・そういうフェリックスとは対照的に、ドミトリーはそこまで自分の「正義」を絶対的なものとは考えてなくて(というか、ドミトリーは自分の「正義」と他者の「正義」を可能な限りすり合わせようとする人なので)、もっといい、お互いが妥協し納得して共有できる穏当な落としどころ(≒「正義」)があるはずだ、と思って足掻いている。フェリックスからすればそれは夢物語だし、そういうドミトリーを、「そこまでしてやる価値もない相手に/なぜこちらが(というか僕のドミトリーが)譲歩せねばならないのか」と苦々しく(歯痒く)見ているんだけど。

・で、他者の「正義」に対してどう対応するか、というところでは対照的なドミトリーとフェリックスも、「他者の「正義」を(尊重するかは別にして)認める」という点においては一致してて、だからこそ「自分の「正義」が全員に受け入れられる訳ではない/自分の「正義」を守りたいなら(やり方はどうあれ)戦わなければならない」って考えてるところがあるんだけど、その一番の相手たる皇后はその「「正義」を巡る戦い」をいつも「いじめられた」と常に被害者側で捉えることしかできなかった/相手にもまた「正義」があるということを認識しようとしなかった。だから戦いにもならなかったし、折り合う点を見つけられる筈もなかった(※)。

(※ かといって、アレクサンドラ皇后が悪なのかというと、そういう描かれ方はされてなくて。彼女は彼女なりに必死で、他者の「正義」を認められるほどの余裕なんて持ち合わせようがなかった、というのが観客には十分に示されるので、どちらかというと同情的になるくらいだと思うんですよね。あの立場に放り込まれて、彼女を頭から批判できるほど強い人間ってそうそういないと思う。普通に見ると、皇后かオリガに感情移入するんじゃないかなぁ)

・ドミトリーによって世界を広げたオリガが、母親のもの以外にも「正しいこと」はあるのだと知って、彼女なりの「正義」を得て(見出して)、だけどそれの上で母の「正義」に殉じる判断を下す、という流れにいつも泣ける。何も知らない籠の鳥のまま死ぬより残酷なようにも思うし、同時にそれが救いとも思える。

・ツインカでドミトリーがオリガに、「なぜ反論しない?(君は反論していいんだ)」って諭す場面、あの場面に「自分が正しいと思うなら、主張しなければいけない」っていうドミトリーの考え方が一番出てて(でもってその考え方を私は好ましいと思うので)、すごく好きです。あの時、例えオリガがどんなトンチキなことを言ったとしても、ドミトリーはちゃんとフォローする気だったと思うし、予想以上にしっかりとした反論が出てきたことに、フェリックスはオリガへの認識を改めている。

・フェリックスは皇帝一家のことを嫌ってるんだけど、ここでオリガを見直す柔軟性もきちんと持っていて、それは「(怪我をした)アレクセイを車で送ってくれたんです」と取り成されても、フェリックスに態度をあらためるでもない皇后との対比があるのかも(あの場面、フェリックスに対する皇后の物言いにムッとしたり、とっさに取り成そうとしたりするドミトリーの姿に、フェリックスへの友情を見て取って毎回ニヤニヤする)。

・「ただのアレクセイでも、君にはちゃんと値打ちがあるはずだ」っていう台詞好き。

・「君が必要なんだ」に対するドミトリーの返答「汚らわしい暗殺者が?」の「?」が初日から薄くて、聞きようによってはドミトリーがフェリックスを「汚らわしい暗殺者が!」って罵ったみたいに聞こえるので、もうちょい疑問感強くてもいいのに、って毎回思う。何か意図があるんだろうか。あと、「お前がそういう風に私に語りかけるのは、いつのこと以来だろう」っていうマリア皇太后の台詞はオリガに向けてのものだと思うんだけど、直前に言葉を発しているのがドミトリーなので(そしてそれに対する返答と取れなくもないので)、いつもちょっと混乱する。

・これだけ回数見てるのにラスプーチンという役が結局掴み切れなかったという悔いは残ってて、象徴とか概念的な存在に近い(それこそ「ロミオとジュリエット」における「愛」と「死」のような)役のように思うんだけど、でもそこまで単純化されていない感じもあって、わりと、頭の中でもやもやしたまま終わった感がある。オリガにとって、ラスプーチンってどういう存在だったんだろう? 舞踏会に現れたラスプーチンを見たとき、オリガは明確に怯えている(≒「神父様」の異常性に気づきつつある)ようにしか見えなかったんだけど、でもその後を見る限りそうではない感じもして、毎回分からなくなる。

・ツィンカの場面で椅子を直してまわるユスポフくん(可愛い)に気付いた。あの人、案外気遣いの人。ジナイーダと似たもの親子なんだけど、確実に父親の血で薄まってるとこありますね。

・「どうしたの、オリガ」っていうジナイーダの怖さたるや半端ない。あの人絶対に分かってて言ってる。

・舞踏会に現れたイリナを見て、すごく苦々しい顔をするフェリックスと、「あらあらあらあら」みたいな表情のクセニヤさん、そしてアリーナ。フェリックスとアリーナって一分の隙もなく政略結婚なんだろうけどベストカップル感あって好き。

・「血友病ではないロマノフの血が必要なのだ」っていう台詞、もっと病的な持ち味の人がフェリックスを演じてたら、「ドミトリーを取り込もうとしている感」が全面的に出てきて、すごい病んだ場面になったような気がするんだけど、なんだかんだ健全なフェリックスで良かったと個人的には思う。

・ショーは思ったよりサヨナラ仕様だったんだということに今更ながら気付いて、わりといろんなところでめそめそした。

・オープニングで♪太陽色のダイヤモンドって歌いながら両手上げてちょっと身体曲げる(伝わりそうにない説明……)朝夏まなとが好き。ていうか手を広げたり上げたりしてる朝夏まなとが大体好き(だから、任官式の振り付けは最高)。

・午後公演で真風涼帆と朝夏まなとのリフトが変わってた(アクロバティックではないけどなんかやらしい振りに)ので、今更変えるって!?ってちょっとビビった。でもなんか不調があったから……てわけではないのかな。

 

・サヨナラショーがすごくよかった!

・ちょこちょこ小芝居混ぜてきて、観客もちょいちょい笑う感じで、しんみりするというよりは楽しかった。いいショーだった。

・エジプトは領地を広げている→VIVA FESTA→ソーラン宙組→TOPHAT→翼ある人びと(デュエダン)→メランコリックジゴロ→王妃の館→最後のダンス→HOT EYES→シェイクスピア、かな。

・ソーラン宙組の盛り上がりが半端なさ過ぎて、ラダメス見て込み上げていたしんみりムードが飛ぶ模様。あんなに客席がキャーキャーいうサヨナラショー初めて見た。大好き。

・デュエットダンスでつるりと滑る朝夏まなと(スモークに滑ったのかな?)。明日までだから頑張れ……とか思って、明日までという響きに勝手に凹む自分がわりと盛大にキモい。

・鞄持って真風涼帆(違うスタン)が出てきた時、「お前が好きだ!」をここでやり始めるのかと思ってめちゃくちゃニヤニヤした(しません)。メランコリックジゴロのあの歌(♪失うものなど〜)好きなので嬉しい。飲め飲めソングも好き。

・北白川右京からのトート閣下にちょっと笑った。

・最後の衣装がかたちも色合いも好き!(胸元が派手に深くてちょっとドギマギしたけど)

・本当にいいサヨナラショーだった。なんかまだ朝夏まなとの退団が実感できてないんだけど、明日の中継見ればそれなりに落ち着くでしょう。多分。まあ、東京も行きますし……