タカラヅカメモ

全組観劇のライトファンによる宝塚感想置き場。

花組大劇場公演「ポーの一族」

一応原作買って予習はしたものの、はいからさんよりも先に読んだので色々忘れてて、あんまり予習の効果はなかったような……。でもそれくらいでちょうどよかったのでは?、という気もしなくはない。過激な原作ファンが激怒したと聞いても、狂喜したと聞いても納得できそうな出来。通うとなると財布のダメージが半端なさそうだったので、一回見てそれなりに満足できる作品でほっとした。駄作ではないんだけど、傑作では全然ない……かなあ。でも、明日海りおのビジュアルだけで傑作やで!っていう過激派がいても驚かない(ただ個人的な好みだけでいうと、エドガーは装飾過多過ぎた)。

そういうわけでまったり箇条書き感想。

・制作発表会で「ポーの一族〜♪」って歌ってるのを聞いて、いくらなんでもその歌詞はダサいだろ……って脱力したんだけど、案外舞台で聞くと悪くなかった。お、始まるぞ!ってワクワク感を煽ってくれるオープニング(なお、その後に待ち受けるのは怒涛の説明場面の模様)。

・一幕がとにかく超説明モードで、しかもその出来があんまりよくなくて辛かった。登場から30秒くらいで退場(!)したユーシスの扱いとか色々言いたいことが山ほどある……ていうか、ちょっと説明台詞多すぎじゃないですかね……。特急ダイジェストも上手くやってくれたら好きなんだけど、今回の一幕は全部言葉で説明しちゃうのかぁ……って残念感が先行した。狂言回しの現代人たちが完全に説明役に回っちゃってるのが勿体なかったような気がする(日記なり本なりを朗読する体にするとか、もう少し雰囲気が欲しかった)。

エドガーがメリーベルを失ってアランを得るまでの話っていう主筋を変えられないなら、普通にアランとエドガーの出会いから始めて、回想でエドガーの半生を描いた方が収まりが良かったような。で、エドガーとアランの関係性ももうちょっと書き込んで欲しい。「どうして僕を選んだんだ……!」みたいなアランの台詞があるんだけど、え、君たちいつの間にそんな深い仲(違う)に!?って我に返りかけた。柚香光も明日海りおもすごくよかったので、単純に脚本の問題として。

・あと些細な点なんだけどめちゃくちゃ気になったのが、ギムナジウムとかパブリックスクールの生徒たちがスコッティ村の子どもたちと変わらないくらい庶民的なあたり(品がない、というと言葉がキツ過ぎるんだけど)。原作もそうだっけ?ああいう学校って監督生とかがいて、バチバチに規則に縛られてて、表向きはお行儀がよいものなのでは(そしてイジメはめちゃくちゃ陰湿(!)なのでは)……ノリがアメリカンで現代的過ぎて困惑した。受けるイメージよりも舞台上の設定年齢が低いせいかなあ、って気はする。

エドガーダンサーズで笑いそうになったんだけど、私は悪くないと思う。衣装合わせてくるのホントギャグだから概念的な役の衣装にして欲しかった……

・老ハンナの死に方がすごくよかった(ちゃんと、服を残して塵になる)。ただ制約があるのか、他のバンパネラたちは同じ演出で死ねなくて、リフトされてはけたりせり下がったりするんだけど、老ハンナはちゃんと服を残していったのに他の人は丸ごと消えるの!?って微妙に分かり難くて残念。老ハンナの死に方が完璧だっただけに色々惜しい。せめてメリーベルは同じ演出でやって欲しかったなあ(多分、何かしらの物理的設備的な制約があって無理なんだろうけど)。

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・明日海りおのエドガーは完璧ハマり役。そして意外なことに、柚香光のアランもハマってて素敵だった。この二人の関係に焦点が当たってる場面はどこも好き。小劇場公演でやった方が、意外と良かったんじゃないかなあ。ショーアップすればするほど、「ポーの一族」ぽさみたいなのが薄れちゃう気がする(でも大劇場公演ってある程度ショーアップしてくれないと舞台が埋まらないんですよね……)

・最後二人が幸せそうに見えなくもないので、後味が悪くないのも良かった。ギムナジウムの場面に蛇足感がなくもないんだけど、あった方が明るく終われる気がする。

・シーラ仙名彩世が美しくて、でもってこの人声が可愛いので、意外とメリーベルいけたのでは…?ってちょっと思った。仙名彩世がメリーベルなら、もうちょい踏み込んでエドガーメリーベルアランの物語にできたような気がするんですよね。もちろん華優希のメリーベルも可愛くてよかったんだけど。

・鳳月杏が悪い色男丸出しで、あれ?クリフォード先生って表向きはもうちょい誠実そうな(なおかつちょっと芋臭さのある)人じゃなかった……?ってなった。「粋なキスを知らなくて…」とか言ってるけど、とても田舎のプレイボーイには見えない怖い。 なので、ジェイン桜咲彩花が気の毒でとても良かった。好き。あと、原作でどうだったか分からないんだけど、男爵一家バンパネラって気付いたクリフォードが「ジェイン!」ってスッ飛んでいくとこに、女遊びはするけどなんだかんだ言ってジェインのことが好き、感を感じて結構ホッとする。この作品、性格的にマトモな人があまりいないから……ね……

・水美舞斗がすごく美しくて、二幕で長々歌う説明ソングが盛大にアレ(!)。結構歌える人だと思ってたので、不意をつかれておおう…ってなった。でも超美形だからセーフ。

・ホテルの支配人がいい声。多分和海しょう。多分。

・アラン母が花野じゅりあなのがすごく良かった。落ち着いた美貌と、溢れ出る「女として現役」感。好きだわ。

・フィナーレの男役群舞が死ぬほどオラオラしてて、すごく楽しかった。ポーの一族ぽさはあんまりないけど、ああいうの大好き。あと、デュエットダンスの衣装が素敵。

・貸切だったから、拍手が薄くてそこはちょっと残念。

・そういえばパンフレットが物凄く凝ってた。日本物ではないのに、謎のこだわり(?)で右開き/縦書き。綴じ込みピンナップ付。小池修一郎の挨拶が気合入ってて、念願叶ったんだなあ、と(萩尾望都の許可が三十年出なかったのではなくて、エドガー役者とポーの一族が出来る時代を待ってた、みたいなニュアンスだったけど)。あと、萩尾望都のコメントが意外と文章書き慣れている人のそれで、面白かった。

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そういうわけで、なんだかんだ文句はいいつつ楽しかった。チケットが確保できたら二回目行こうかな(無理だろうな……)って感じです!