タカラヅカメモ

全組観劇のライトファンによる宝塚感想置き場。

雪組東京宝塚劇場公演「ひかりふる路」「SUPER VOYAGER」/4回目

WSSがああいう救いのない悲劇だったので、ショーが妙に楽しかった。「宝塚ってどんな悲劇でも終わった瞬間、ポップな曲でラインダンス始めるじゃんどうなのそれ(雰囲気台無しじゃん)」みたいな意見に、今なら胸を張って言える。それが宝塚のいいところだし、ショーは正義!(「星逢一夜」のあとに、「ラ・エスメラルダ」がなかったら辛過ぎるじゃん……みたいな話です)(ただまあ、雰囲気台無しじゃん、って意見も分かる)。

そういうわけで諸々感想は箇条書きで。

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・恐怖政治の場面に結構大きい変更があってびっくりした。「徳なき恐怖は無力である」が、「徳なき恐怖は忌まわしく」(こっちの方が意味的には通ってる気はする)になって、その手前に台詞が色々追加されてる、のかな(あまり記憶に自信がない)。分かり易くするための説明台詞追加だと思うんだけど、この話って基本的に戦争も内乱もそういう緒問題は全部サイレント処理されちゃうので、変に説明するよりも雰囲気で流している方がよかった気がしなくもない。個人的には望海風斗の「全てだ!」がツボだったので、なくなってて(というか、微妙にやり取りが変わってて)、ちょっぴり残念だった(「全てだ!全てをやるんだ!!」って言った瞬間の、ロベスピエールの中にある天秤みたいなものが、ガン!って振り切れちゃった感が好きです!)(でも東京ではなかった残念)。

・「ダントンとデムーランを処刑しました!(ウキウキ)」って報告するサンジュストが、ロベスピエールの反応を見ている内に、「あれ、もしかして、なんか……間違った……?」って徐々に表情を翳らせるあたりがなんか好き。意外とこの話って、サンジュストがマトモなんですよね。いかにも「狂信者」な役だし(片耳ピアスだし)、銀橋で抱き締めたり、あなたは神だって口走ったり……でヤバイ系って印象が先行するんだけど、実は真面目だしわりとマトモだし真人間といえなくもない(少なくとも、「恐怖政治」にまつわる諸々を正義と心底確信するような狂信者では全然ないし、やってることが「悪」に分類されることだってちゃんと認識してる)。序盤のつくりとか演出を見てると、元々はもっと突き抜けた狂信者になる予定だったのかなあ、って思った(場面場面でサンジュストのキャラが(脚本レベルで)ブレてるのって、そのせいなんじゃないかと)。

フーシェの「お姫様にはナイトが……」が相変わらずツボ。はったり利いてて、めちゃくちゃゲスい(褒めてる)。好きだなあ、真那春人。

・「至高の存在のための祭典を開くのです!」みたいな台詞の後に客席に漂う、「何言い出したんだコイツ」感。史実通りらしいけど、唐突感半端ないのと(私に教養がないので)、「うわあ、いよいよ宗教がかってきたゾ(※)」みたいなドキドキ感にハラハラした。(※ 宗教化(=中心人物の神格化)→教義の厳格化→異教徒の弾圧・教義違いの内紛、っていうルートが簡単に想像できちゃうというか……/革命派が既存の宗教を否定する(ことが多い)のって、革命(反体制組織)そのものに新興宗教的な側面があるからだと思うんですよね)

・で、フランス革命に限らずこういう革命モノって、うまくやらないと、いわゆる「学生運動っぽさ」みたいなのが出ちゃうんだなって思った(この場合の「学生運動っぽさ」っていうのは、安っぽいとか稚拙とかそういうことではなくて、山岳ベース事件的な陰惨さとか集団心理(=総括!とかいってリンチしちゃうノリ)と、カルト宗教化的な部分です)。これは生田大和の脚本に、学生運動に対する思い入れみたいなものがないせいもあるかも。

・祭典の背景のピラミッドがくるりと回転してギロチン(を模した斜めライン)になるところ、皮肉な(革命の理想も理念も裏返せばギロチンでしかない、みたいな)演出で毎回いいなあって思う。

・「人生の喜びを知らないやつが、人に喜びを与えられるわけがない」みたいなダントンの台詞と一連のやり取りがすごく好きで、そのせいで彩風ダントンに甘い自覚アリ。「人を幸せにしようと思うなら、お前がまず幸せにならなければ」っていう彼の言葉は間違いなくロベスピエールの耳に届いたし甘く響いたんだけど、だからこそ、その言葉をロベスピエールは受け入れることができなかった(望海ロベスピエールは心のどこかで、自分への罰を求めてるので)。それを分かってるダントンがそれでも、「お前は幸せになっていいんだ」って振り絞るように言うのが切なかった。

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・通路際の席だったので、オープニングの客席降りですでにウキウキ。手が届きそうな距離で踊ってくれる、なんなら視線もくれる(錯覚じゃない、ハズ)ってことのインパクトたるや!!すごく楽しかった。まあ、ヘタレなので、あまり近過ぎるとどこを見ていいのか分からなくなるし、手を伸ばしてハイタッチしてもらうような積極性も持ち合わせてないんですけど……

・恥ずかしい歌詞には慣れてきた。慣れてきちゃった。

・中詰でせり上がってきた真彩希帆が「はあーい!」って叫んだ瞬間に私のテンションもマックス。

・真彩希帆も望海風斗も歌声が気持ちいい人なので、歌ってくれるだけでわりと満足。中詰せり上がりの歌とか、日記の場面の「天の海に輝く星に憧れて」の「てんの」の箇所とか狂おしいほど好き(望海の「海」は天海祐希の「海」なんだろうか)。あと、ロケットの銀橋デュエットとか、デュエットダンスの歌も好き。ていうか、大体全場面好き。

・野口幸作の選曲センスは全力で支持する。「曲がちょっとなあ」って思う場面が一つもなかった。

・スーツで踊る彩風咲奈がヒョイって、無造作に(でも高々と)足を上げるのが地味にツボ。あの、いかにも「踊れる人!」って感じが好き(ホントに踊れるかどうかは、この際問題じゃない)。

・彩風咲奈って珍しくパステルカラーが似合う男役なんだよなあ、って思うパレード。あの水色の衣装、結構難しい衣装のような気がするのに、めちゃくちゃ似合ってて嬉しい。人畜無害な顔して悪徳の限りを尽くすような役が一回見たいなあ。やってくれないかなあ。

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あとは、千秋楽中継で見納め、の予定。なんだかんだで、4回見れて良かった!