タカラヅカメモ

全組観劇のライトファンによる宝塚感想置き場。

東京宝塚劇場公演「ひかりふる路」「SUPER VOYAGER」/5回目(中継)

なんというか、望海ロベスピエールが剥き出しの感情と質量のある歌声でひたすらに殴りつけてくる、そんな狂乱の一時間半(わりとマジで)。映像に切り取った時点で別の作品になるのが舞台作品の常とはいえ、あまりにも自分が見てたものとは別のものが出てきたので、映画館で死ぬほどびっくりした。おかしい……私が知ってる「ひかりふる路」となんか違う……。でもめちゃくちゃ新鮮で楽しかったし、カメラワークひとつで全く別の作品になる、というのが、中継(=映像化)の面白いところでもあり難しいところでもあるよなあ、と改めて思った。宙組宝塚千秋楽は、「自分の視点に限りなく近い/だからノーストレス」で、今回の雪組は、「自分の視点とは全然違う=別の作品を見てるみたい/だから印象が変わって面白い」って感じ。素敵なカメラだった(ちなみに宙組東宝千秋楽のアレは放送事故です)。

てことで、テキトーな感想を以下に。

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・千秋楽だからか、望海風斗のリミッターが完全にブチ切れてる(怖い)。

・やたらとカメラが朝美絢を抜くので、サンジュストロベスピエールに向ける、ちょっと正常な範囲を逸脱したヤバめの「独占欲」みたいなものがびゃんびゃん伝わってきて面白かった。特に、彩風ダントンが「革命も一段落したし、お前も結婚しろよ」とか何とかロベスピエールに言う場面(そこでエレオノールじゃなくて、サンジュストを抜くのって生田先生の意向なの?)。チラチラ映る朝美サンジュストが常に、「あなたの偉大さを一番理解しているのは僕なのに」みたいな顔してて、思わずヒェッってなった(怖い)。

サンジュストロベスピエールに向ける感情っていうのは、まあ、ラブではない(サンジュストは別にロベスピエールに愛されたいわけではない)ので、ロベスピエールの結婚とか恋愛を忌避するのは別に嫉妬とかでは全然ない、と思うんですけど。ただ、ロベスピエールに対する神格化がちょっと行き過ぎてるせいか、「凡百の女にあなたの価値が分かるもんか/そんな女、あなたには相応しくない/妻なんて、あなたには必要ない」ってスタンスで一貫しちゃってるような気はするんですよね(例え、美貌と知性と教養を兼ね備えたスーパーウーマンでも、サンジュストが認めることはないんじゃないかと)(サンジュストがいる限り、ロベスピエールは結婚できねえな……)(妻=友人って置き換えると、友達もできねえな……)。

・あと、演ってる朝美絢がああいう美貌の人なので、サンジュストロベスピエールに向ける視線に、「少女の純粋で潔癖な恋着」めいたものが見え隠れする瞬間があるのが、なんというか、話(というか二人の関係性)をややこしくしている気がする。潔癖な年頃の少女って、たまにギョッとするほど残酷な一面を見せたりするじゃないですか。あの感じが実にサンジュスト

・しかし、映画館のスクリーンのアップに耐え得る美貌って一種の才能ですね。

・リミッターを跡形もなく破壊した望海風斗の顔がわりと「どう見えるか/どう見せるか」っていう計算を失って乱れがち(!)だったんですけど、なぜか不思議とそれがかっこよくて、キレイではないのに美しくて、印象的。特に、ダントンの裏切り発覚から、恐怖政治に至るまでの一連の流れのところ。疲れ果てて憔悴しているのに、目だけが爛々と輝いていて、額に落ちた髪が色っぽくて、めちゃくちゃかっこよかった。望海風斗って白目が大きいのが、舞台で映えるなあ。贔屓目入ってます!

・「全てだ!全てをやるんだ!!」がなくなったのがいまだに悲しい。

・敢然と処刑台に赴くロラン夫人に夢中すぎたせいで、ジロンド派の処刑の場面のロベスピエールサンジュストを中継で初めて見た、ような気がする。やれ、って指示を受けて超嬉しそうだった。サンジュストくんって、ロベスピエールを見るとき大体恍惚としてるよね……。

・「今こそ彼の言葉を聞こう!」って言葉でせり上がってきたロベスピエールが銀橋を渡るところ、銀橋のライトが端から順に点灯していくのが夢のように美しかった。革命が最も輝いていた瞬間、彼らの目に写るのは間違いなく明るく輝く未来で、目の前にはひかりふる路が真っ直ぐに伸びていた。彼らの結末を知った上で見るとき、「これからも三人で仲良くやるんだ!」よりもむしろこの場面で泣きそうになる。望海ロベスピエールの歌声が希望に満ち満ちているのでなおさら(あと、この歌が祭典で繰り返されるのがまた、憎い演出だなあ、と)。

・寄り気味のカメラと迸るパッション!のおかげで、これまでで一番マリーアンヌが理解できたような気がする千秋楽。彼女の「私は二度も家族を失った/家族だけじゃなくて愛する人も」みたいな台詞、「二度」が「愛する人」にも掛かっているように聞こえて好きです。「私が愛したあなたもまた、革命に奪われた」って、マリーアンヌなりの精一杯の告白じゃないですか。同時に「今のあなたを愛してはいない」っていう決別の言葉なのが残酷なんだけど。

ロベスピエールの説得に失敗したダントンの頬に流れる一筋の涙。なのに、湿り気のない声で、別れを告げるのが、最高にかっこよかった。ビジュアルじゃなくて(この公演、メイクは正直失敗してた気がする)、その生き様がかっこいい。彩風咲奈に関しては正直、贔屓目入っているので冷静な判断ができない。

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・超変化球な月組の後だったので、王道には王道のよさが(いつもの宝塚のよさが)あるんだよなあ、って思った。バッディ最高だったですけどね。少なからず、アイデア一発勝負!みたいなところはあるので。

・前回くらいから、オープニングの歌詞に慣れてきたような気がしてたんだけど、全然そんなことなかった。やっぱり恥ずかしかった。特に、「俺が暖めてあげる」「ギュって」のあたり。星組エンターテイナーにも似たような歌詞があったんですけど、野口幸作のツボなんですかね……。

・暴風雪は中継で見ると結構アリでした。