タカラヅカメモ

全組観劇のライトファンによる宝塚感想置き場。

花組ドラマシティ公演「蘭陵王」

「騎w馬w戦w」「光wるwヌwンwチャwクwww」みたいな感想が流れてくるのを眺めてたら、見とくべきなのでは?見なきゃ後悔するのでは?(だって私木村信司好きじゃん?)って気持ちがフツフツと湧いてきたので、衝動的にチケット取って見てきた。結果、見といて良かった。私の好きな木村信司だった。嬉しい。「オグリ!」が好きな人は見た方がいいと思う(多分)。

木村信司は結構主張の激しい作品を作る人なので、そこが鼻について嫌いだという人はいると思うけど、個人的には石田昌也よりも断然抑制が効いてるからアリだな、って思った(あと、ちゃんと作品の中に落とし込まれている気がする。まあ時々主張が先行するけど)。

まあ、ちょこちょこ失笑ポイント(※)があって腹筋を試してくるあたりは、よくも悪くも木村信司なんですけどね……(私的三大失笑ポイントは、「騎馬戦(の演出)」「蘭陵王コール」「光るヌンチャク」です。「騎馬戦」は文字通り騎馬戦スタイルだった方がマシだったと思うし、「光るヌンチャク」は見ようによってはかっこよかったけど、蘭陵王コールはどうだろうね……客席もコールしたら楽しかったかもね……)

てことで、走り書き感想。

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・端的にいうと、性的にもそれ以外の部分でも搾取され続けてきた、そういう生き方(生かされ方)しか知らない子どもが、「搾取されている」という事実に気付いて、拒絶する(拒絶してもいい)という発想に至るまでの話なのかな。「何もかも捨てて逃げろ」っていう歌が印象的。あと、ガチの同性愛描写(というか、それが完全に弱みに付け込んだ小児性愛描写であること)に、最初ちょっとギョッとした。キレイ目に描かれてはいるものの、どうしても陰惨な匂いが隠し切れていない。話のテーマ的に、彼らにも「愛」はあった、っていう話ではあるんだけど(それが全然救いになってないのがテーマ通りでもあり、救われないところでもあり)。

・高緯とか逍遥君の視点では明確に愛があるんだけど、蘭陵王にはその「愛」がずっと理解できていなかったというか、彼にとっては「愛(を言い訳にして自分に向けられる欲望)」が、「暴力」でしかなかったあたりが、切なくて仕方がなかった(全然同じ次元に立って話ができてないのに、誰もそのことに気付いていないのが不幸すぎる)。高緯のあの振る舞いは、そりゃ、拒否できない立場の蘭陵王からすると、紛れもなく「暴力」でしかないよなあ、と。切ない。

・高緯はまあ、いうなれば、性質の悪いツンデレヒロインそのもの(※)。残念だけど、「ツンデレは暴力」なんだよね……(※しかもヤンデレ(逍遥君)がセットでついてくるのでさらに性質が悪い)。

・「人の嫌がることはしない」って最後に乱暴にまとめられるんだけど、むしろ「愛があれば何をしてもいいわけではない」とか「愛は時に暴力である」の方が近いのでは、って思った。実際のところ、蘭陵王は「嫌がって」なかったじゃないですか。彼は、自分に向けられる欲望(彼らが「愛」と称する何か)を、「嫌がっていいこと」だとも、「嫌がるべきこと」だとも認識してなかった(できなかった≒その発想がなかった)(だって、彼はその「愛」がなければ今生きてここにいることさえできなかったんですよ……)。そこが個人的には一番切なかったし、最後「やめた」って蘭陵王が言った瞬間、「それでいいんだよ!!」って、めちゃくちゃ嬉しくなった。

・逍遥君が毒を呷るくだりで女言葉になるのはちょっと余計だったと思う(男を好きな男が全員オネエなわけじゃないじゃん……?)。あと、高緯は女なのに男に生まれてしまった人で、女として逍遥君が好きだった(精神的にはゲイではない)と思うんだけど、逍遥君は男として、男である高緯が好きであるように見えたので、いやあ~不幸な関係だわあ~ってなった。逍遥君がヤンデレ感満載に花毟ってる場面大好き。

・京三沙の語りがすごく良かった。さすが専科、という語り口。小説でいうところの、「地の文」だな、と思ってたので、最後一捻りしてあるのも嬉しかったし、ちゃんと語りが練り込まれてリズムのいい文章なのも良かった。この辺り、やっぱり木村信司とは相性いいんだと思う。

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・逍遥君の帆純まひろがめちゃくちゃ美形。最初見たとき、水美舞斗かと思って二度見した(いるわけがない)。

・宝塚の男役って大体オネエの役が死ぬほどうまいけど、瀬戸かずやも例に漏れずうまい(キャラクタがはっきりしているから演りやすいのかな)。あと、声をいつもよりも作ってないせいか、瀬戸かずや比で歌がうまかった気がする。最後の歌は泣けた。でも、「好きだったのよ!」っていう叫びの辺り、最後まで分かり合えない感満載で残酷。

・花野じゅりあが「じゅりあ様」って平伏したくなるくらいに美女。大好き。あの美貌がなければ、騎馬戦の場面で精神の安定を失ってた気がする。あと、異常に苛烈な実況中継(!)がすごく良かった。贅沢な使い方だなあ。中華美人やらせたら、右に出る人いないと思う。

・凪七瑠海はぽやぽや可憐な少年(十代前半)をやっても全く違和感がないのが凄かった。ビジュアル的にも、声でも、歌でも、完璧に美少年。無理無理しさも若ぶってる感もゼロ。とにかく、可憐で、ひたすらにいたいけ。少年ルドルフやれる(確信)。メイクはもうちょい、女役に寄せてもよかったんじゃないかなあ。イオカステ(オイディプス王)の時、死ぬほど年齢不詳で、神秘的で、謎めいた美女だったから、個人的にはあのメイクで見たかった。

・ヒロインが良かった(誰か分からずに見てた)。ちょっと地味だけど、洛妃という役にはその地味さが似合ってる。でもって歌もお芝居も上手い。クライマックスで「生きろ」「何もかも捨てて逃げろ」って歌うところで、グッと来た。泣けた。いいなあ、音くり寿(調べた)。素顔見る限り、化粧が上手くなればもっと綺麗になりそうな人なので楽しみ。

・「愛していますお慕いしています」の歌も良かった。生田大和の迸る中二感もキライじゃないけど、木村信司の平易な言葉遣いも好きだなあ。今回は、言うほど連呼しないので木村信司感はわりと薄めな気もする(そうか?)

 

 

宙組大劇場公演「白鷺の城」「異人たちのルネサンス」/1・2回目

めちゃくちゃ期待してた宙組は、絶対面白いだろって思ってた大野ショーが不発で、(王妃の館はよかったけど)オリジナルはどうなんだろう……って心配半分だった田渕芝居がアタリという意外な結果。「白鷺の城」には期待してた分、ガッカリ感が大きい(そのせいで必要以上に評価が辛くなってるかもしれない)。大野拓史が好きなだけに凹む。あとチケット確保でちょっとミスってW観劇日程を組んでしまったせいで一層ショーが辛かったってのもあるかも(続けて見るとやっぱり粗がね……)。

てことで、諸々テキトーな感想。

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・「白鷺の城」の最大のネックは、説明台詞が多すぎる上にダサイことで、しかも救われないのは、その割に全然分かり易くなってない(※)ことです。「ショーなんだから雰囲気でオッケー」っていう割り切りが全然できてない。説明したいならせめて歌詞(=歌)でやってくれなきゃ辛すぎる。

(※ これは構成のせいもあって、ざっくりいうと、「現在→四百年前→回想(六百年前)→四百年前の後であり現在よりも少し過去→八百年前→現在に戻る→その後」って感じの流れなんだけど、巻き戻しに巻き戻しを重ねたせいで無駄に分かり難くなってるんですよね。物語の起点を「四百年前」に置いた方がスッキリしたんじゃないかしら……)

・「ホントはこの題材で芝居がやりたかったのでは」って一緒に見に行った人が言ってて、それにはちょっと頷けたんだけど、いわば予告編の今回がこの出来じゃあ、本編も(芝居でやっても)絶対面白くないよなあ、って思った。思っちゃった。予告編(ショー)なら、ちゃんとクライマックスとか映える場面とかキャッチーな台詞とか、とにかく「ここが大事なの!」「これを真風宙組でやりたかったの!」ってとこを切り取ってくれなきゃダメなんじゃないですかねえ(ダッサイ説明台詞はノーサンキュー!)。「本編に出てくる要素で構成されていて」「面白そう」だったらオールオッケーなのが(ストーリーを理解させる必要はないのが)予告編だし、ショーもそうじゃん……?

・あと、輪廻転生もの(=通し役なのがトップコンビ+アルファくらいしかいない)ってこともあって、ストーリーショーなのに「キャラクタが立っていない」(なおかつ場面単独で印象的な役もない(※))というのが、ちょっと残念ポイント(※ 歌にも振り付けにも響くものがなかった、ってのもある)。ショーとしても芝居としても中途半端で、上田久美子のバッディは相当うまくやってたんだなあ、って改めて思った。

・まあ諸々文句は言ったけど、宴の場面で盆が回って出てくるときの真風涼帆の色男ぶりは良かったし、武者軍団が銀橋に並ぶところ(テンション上がる)とか、チョンパ(?)の華やかさとか、最後の総踊りとか、芹香斗亜の赤の似合いっぷり(特に平安貴族モードが最高)とかはすごく好き。松本先生の使い方はうまいことやったな、って思った(でも台詞はエコー効き過ぎてて笑うからなしで頼みたい)。あと星風まどかは意外と高飛車なのが似合うというか、ツンとした顔をして見せるのが魅力的な人なのねっていうのは嬉しい発見だった。すごくキュート。

・あとどうでもいい話として、和物化粧の真風涼帆がびっくりするくらい水夏希

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・でもって、田渕大輔いけるやん!!って大歓喜したお芝居。

・とにかくベタなメロドラマなんだけど、特別大きな瑕疵もなく、破綻もなく、メインキャラクタはややマンガ的なきらいはあるけどきっちり立ってて、衣装も全然着替えないけど素敵で(なおかつ豪華で)、主人公の身勝手さに閉口するような展開でもなければ、悪役がお間抜けすぎて気の毒になり過ぎることもなく、魅力の分からないヒロインということもなく、舞台転換はスムーズで、セットも素敵という、おおよその項目で平均点以上を取ればこうなるな!というお手本のような良作(だけどつまんねーわ!っていう人がいても意外ではないし、大好き!傑作!!っていう人がいても驚かない。私は好きです)。

・いかにもミュージカル!な場面がないのと、役が少なめなのと、わりと淡々と進んでストーリー的な盛り上がりに欠けるあたりが、ネックといえばネック。あと、カテリーナがひたすら周囲の思惑に翻弄されるヒロイン(なおかつ人格的魅力はほとんど描かれないにも関わらず、欲望の対象になり続ける女性)なので、好き嫌いは分かれそうではある。私は好きです(二回目)。

・田渕大輔の演出は回想の書き方に特徴があるのかなあ、って印象で、それが個人的に結構ツボなので評価が甘くなってるような気はする(「王妃の館」でのルイ十四世の回想場面とか、今回の幼少期の入れ方とかめちゃくちゃ好み)。

・カテリーナは一見「(男性視点で)都合のいい女」なんだけど、真風レオナルドの恋着の向け方(対象)が、あくまで「カテリーナの瞳にかつてあったはずの希望の光」なので、自分の「幻想」を押し付けるような嫌らしさがなくて、ロレンツォの有能だけどちょっと歪んでる(カテリーナの人格には価値を認めていない)ところと対照的ですごく良かった。ただまあ、ロレンツォはレオナルドとカテリーナの関係をすぐに察する気がするし、それを愉しむような性質の悪さもありそうだよなあ、とは思った(芹香斗亜がまた、性質の悪い色男を余裕たっぷりにやっててかっこいいんだ。赤が似合うし、ウェーブがかった黒の長髪も似合うしで、ビジュアルも完璧)。

・主人公であるレオナルドも、直接的に美点が描写される場面がほとんどないんだけど、逆に言うと、脚本的に欠点が描かれてるわけでもないので、じゃあ真風涼帆がかっこいいから無問題だな!!って印象。脚本にさえ足を引っ張られなければ、タカラジェンヌはちゃんとかっこいいし、かっこよくみせる方法を知ってるし、かっこよく演ってくれる(でもってその「余白」が田渕大輔の脚本にはちゃんと残ってる)。

・芹香斗亜が色悪というか、「悪いけどそれがかっこいい」人物として描かれているのとは対照的に、愛月ひかるのグイドはもう少し踏み込んだ、気味の悪い、生理的嫌悪感さえ感じさせる悪役で、キャラクタに対しての好悪は別にして、なかなか面白かった。これは多分、私がカテリーナとの関係に不穏な深読みをした(「手塩に掛けた」とか「許しを請うことを教えられた」とかの台詞に性的な(あるいはもっと陰惨な)匂いを嗅ぎ取ってしまった)せいもあると思う。

・あと引っかかったところでいうと、ロレンツォがちゃんと生きているってことを匂わせとかなきゃいけないんじゃないの(工房メンバー&サライが駆けつけた後、転がっている人間の生死を確認せずに捌けていくのは不自然だぞ)っていうのはちょっと思った。ジュリアーノの死を確認する→ロレンツォ様はまだ息があるぞ→運び出して退場、でよくないですかね(愁嘆場の横でそれやるの微妙かしらん)。

・「(父と兄の)後姿を誇らしい気持ちで見ていた」ってジュリアーノに言わせるあたりが、田渕大輔好きだなって思うところで、優秀な兄に対する鬱屈した思いが滲んでて良かった。結局のところ、ジュリアーノがカテリーナを求めるのは、彼女に惚れたからではなくて、「兄の物を奪いたい(=兄よりも優れていると示したい/意趣返したい)」「兄に認めてもらいたい」だけなんですよね(だからこそ、一層カテリーナという人が哀しい)。こじらせたブラコンだぁ、って思って見てた。あとロレンツォがちゃんと有能かつ自分が有能ではないと判断した人間の価値を認めていない(しかもそれを隠さない)男に見えるので、「この兄ならジュリアーノが鬱屈するのもしゃーないな」って同情した。

・細かいツボとしては、「私は自分が何を望んでいるかも分からないのに」っていうカテリーナの台詞と、彼女を抱きとめたレオナルドの「君の望みは俺が知っている」っていうやり取りとか。ロレンツォは偉大な男だと示して見せるクラリーチェの誇らしげな様子とか(ロレンツォが正妻たるクラリーチェに敬意を払ってみせる描写があってもよかったと思う!見たかっただけ!!)(ロレンツォは賢い人間が好きだと思うから、クラリーチェも結構好きだと思うの/小鳥を殺させたくだりなんかは、「女というものは愚かなことをする」くらいのこと思ってそうだけど)。「孤児に変な夢を見せるのはやめてくれ」っていう酒場の女将の親心とか。胸糞一歩手前で物哀しさを感じさせるサライというキャラクタとか(ちゃんと一貫してるので、「そりゃこの立場ならそうするのを一概には責められないよなあ(人間だもの)」ってすごく切なかった)(もうちょっとパッツィが「お前が賢ければ金を得られるが、愚かであれば命を失うのだ」みたいに脅してあげて、サライの裏切りに一定のエクスキューズを与えても良かったとは思うけど)。

・で、フィナーレがこれまたすごく良かった。田渕大輔にも一度ショーを作って欲しいなあ。ラインダンスの衣装がとても良かったのと、娘役群舞の振付(フォーメーション)が印象的。あと男役群舞で裾をマント風に捌くのがめちゃくちゃかっこよかった。好き。

・羽根が真風涼帆だけなのは、星風まどかが怪我の影響で羽根を背負えないからなのかな?(星風まどかが背負ってないのに、芹香斗亜が背負うわけにもいかないだろうし)。豪華衣装着てるのが真風涼帆だけで、これはちょっと仲間外れ感があって寂しかった(でも衣装と羽根の取り合わせはすごく良かった)。

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そういうわけで、星風まどかがデュエットダンスに復帰するようなら後半にもう一回行こうかなあ(チケットは何とかする前提)って悩み中。やっぱりデュエットダンスはトップコンビで見たいんですよね(というか、トップコンビじゃないと意味がないというか……)(もちろん、代役の人は過不足なく務めてたんだけど)。ショーが厳しかっただけにちょっと悩む……。

 

 

東急シアターオーブ公演「マイ・フェア・レディ」/1・2回目

いかにも「古き良きミュージカル」といった佇まいで、宝塚に慣れ切った(でもって、ヅカオタになるきっかけが「小池修一郎の派手な舞台転換」だった)身にはちょこちょこ間延び感がなくもなかったんだけど、女優・朝夏まなとを愛でる演目として完璧だった気がするので文句はあまりない(※)。とにかく朝夏まなとのドレス姿(特に舞踏会の白)が輝かんばかりにキレイで、ガサツな花売り娘が超キュートで、不満げに顔を歪めるのがまさに朝夏まなと!(言語崩壊)くるくると楽しげに踊るときに長い手が一際映えて美しくて、超素敵だった。

(※ イライザとヒギンズ教授でいかにもミュージカルなデュエットソングの一つくらいはあっても良かったんじゃないの?、とは思った。歌と芝居が完全に分離している(=ショーアップされてない)っていうあたりに古さを感じる気がする(宝塚以外のミュージカルをほとんど見ていないので、偏見かも))

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もっとヒギンズ教授の男尊女卑的な部分にイライラする演目なのかと思ってたら、意外とそうでもなかったんだけど、これは多分、男尊女卑的な部分よりもむしろ「階級社会」的なところが押し出されてて、それにイライラするほど「身分差別」っていうものが私にとって身近じゃなかった(現実感がなかった)からかなあ、と思う。

そもそも、出会った当初のヒギンズとイライザが「男と女」じゃないんですよね。ヒギンズにとってのイライザは、「普通に生きていれば言葉を交わすことなど考えられない下賤なるもの(=花売り娘)」であって、「人間」ではない(すなわち「女(=欲望の対象)」でもない)(ヒギンズさんの認識はそれこそ、「拾った犬に芸を仕込んでいる」くらいのノリなんだと思う)。わりとひどい話なんだけど、「この時代なら当然そうなのである」って体で演じられると、「そうなのかしら」って納得できるので、そんなに嫌だとは思わなかった。あとそのおかげで、ヒギンズとイライザの関係性にセクシャルな匂いが一切しなかったのもよかった。これ、最初の段階から二人が「男女」だと、どこかいやらしい(おぞましい)話になっちゃう気がするんですよね。よくも悪くも朝夏まなとに色気がさっぱりないのもあって、寺脇ヒギンズと朝夏イライザの関係性が「紳士と少年」のそれと大して変わらない(性的なものが割り込む余地がない)。それがよかったと思う。

あと、ヒギンズさんって元々「知性」に重きを置いている人でなおかつ、その知性ランキングにおいて自分(と自分が認めた一部の人間(ex.ピッカリング大佐))を最上位においている節があるので、そりゃ当然全方位見下すよなあ(イライザなんかランキング外だよなあ)、って納得しちゃったというのもある(男尊女卑とか身分差別とか以前に、ヒギンズは明らかに自分以外の人間を全員バカだと思ってて、しかもそれを隠す気がない(悪いとも思ってない)人なんですよね。人としてはどうかと思うけど、ちゃんと自負するだけの実績と実力があるので、アリかナシかでいえばアリかなあ、って(それが魅力的かどうかは別にして))。

でもって、ヒギンズがこういう主人公の恋のお相手としては欠点だらけの人なので、「フレディの方がいい男じゃん」みたいな感想も見たんだけど、開幕早々イライザを路傍の石扱いするアレがある限り、フレディも大差ないと思うんですよね。結局のところ、フレディもまた「階級(≒振る舞い)相応に相手を扱う」という紳士のマナーの持ち主なわけで(フレディという青年が善良なだけに、ヒギンズよりもむしろ個人的には辛かったりする)。あのくだりがある以上、フレディが当て馬として強くなり過ぎない言い訳として、「腑抜けキャラ」をやる必要はあんまりないんじゃないのかなあ。そこだけちょっと不思議。

で、そんなヒギンズさんに、自分が一人の「人間」であることを認めて欲しい(認めさせてやる)っていうのが後半のイライザの行動原理なんだろうけど、そこに明確にヒギンズへの恋情があるかっていうとないんだろうな、って思った。というか、その感情をイライザはうまく定義することができなくて、(「対等な人間として認めて欲しい」と要求された)ヒギンズが提示した「恋愛(つまり、君は私のことが好きなのか/君の前に跪けといいたいのか)」にのっただけなのかしら、って印象。警察に電話したピッカリング大佐が、「友達ですよ」って(変な勘繰りはやめてくれ、ってニュアンス込みで)答えるじゃないですか。あれがすごくよかったし、結局イライザが求めていたのはそれだったんじゃないのかなあって。でも、「一人の人間として認めて欲しい」と要求されてすぐに「恋愛」に直結するヒギンズ教授は、それはそれでいかにもな偏屈頑固不器用オジサンが(意識していない部分で)どんどん美しくなっていくイライザに惹かれていた、ってことの証左(※)でしかなくてニヤニヤするし嫌いじゃないです。案外、この二人うまくいったんじゃないですかね。

(※ フレディをこき下ろすくだりなんかで、ヒギンズがナチュラルにイライザを自分の作品(=所有物)認識している気配を感じたんだけど、結構真剣にヒギンズさんはイライザを自分と同一視していて、「自分に対する賞賛」イコール「イライザへの賞賛」って無意識に思ってる(だから、イライザが怒り出すのも理解できてない)んじゃないですかね……。全部自分の手柄(イライザの努力を認めない)、って訳じゃなくて、自分を讃えながら、その「自分」に「自分が作り上げた、自分のイライザ」も含まれている、というか(でも全部無意識なので、本人には全くその自覚がない/だから、怒り出したイライザにマジで意味が分からない、みたいな顔をしちゃうし、それで一層イライザを怒らせちゃう)。あと、ヒギンズさんは、こと人間関係においては致命的に不器用(無能)な人なので、「知性以外の部分で相手を対等に認める枠」っていうのが、「親族(母親)」と「一定の敬意を払うべき年長者」と「恋人」くらいしかないのかもしれない(絶対「友人」っていう枠もないですよね、この人))

結局のところ、ヒギンズの一番の美点は自らの所有物である(と本人が無意識の内に思っている)「美しい貴婦人(イライザ)」に対して、性的な視線を一度も向けなかったところだと思う。それはヒギンズが、もはやイライザは(ヒギンズ視点でも)「一人の人間として認めるに足る存在である」ってことを自覚してなかったせいだとは思うんだけど、でも、人間として認めていない相手に(むしろだからこそ)性的な視線を向けられる人っていくらでもいるじゃないですか。イライザを「人間」として認めて初めてその発想に至るというのは、なんだかんだいって、ヒギンズが善良で健全である証だと思えたし、それで色々とヒギンズにヘイトを溜めずに見れたってのはある気がする。

そういうわけで、年の差恋愛ものとして普通に楽しかった。年の差恋愛ものの醍醐味ってまさに、「君はそういう対象じゃない」って言い張る(年長者側の)意固地なガードをいかにして崩すかってところだと思うので。マイフェアレディって、ヒギンズが嫌いにならなければ(偏屈で不器用なところにニヤニヤできるなら)、めちゃくちゃ楽しい演目なんじゃないかなあ。朝夏まなとなら、どういう風に演じたかなって思ったし、轟悠と若手男役とかで演ったら結構面白いような気もする。

てことで、諸々細かい感想は以下。

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・ちょこっと心配がなくもなかった朝夏まなとの歌が普通に上手くて、キレイな声で、嬉しかった(贔屓目なのは認める)。でもずっと裏声歌唱だったので、やや消化不良感気味。その辺りは次の「オン・ユア・フィート!」に期待。ダンスと露出度高めの衣装(下心)も以下同文。

・どの衣装も可愛くて、よく似合ってて、本当に楽しかった。意外とあの、ヒギンズ教授の家に初めて来るときの(色々間違ってる)おめかしが好き。あと、最初の花売り娘姿。ガッツリ踊るのがここくらいなので、印象がいいってのはあるかも。舞踏会のドレスはただただ美しかった。私、ホント朝夏まなとの顔好きだなあ。

・歌というと、フレディとイライザ父がめちゃくちゃ上手くてびっくりした。特にイライザ父(ドゥーリトル)は台詞声からいかにも「舞台の人」って感じで、一樹千尋さん(めっちゃ好き)を見てるような安心感。低く響くいい声っていうのが、宝塚ばっかり見てる身には新鮮っていうのもあり。

・フレディは役者が上手いだけに、ちょっともったいない役(典型的当て馬)だなあとも思ったんだけど、イライザ父は素敵な役だし見せ場もあるし、何よりキャラクタにハマっててすごく良かった。「運が良けりゃあ〜♪」のシーンが個人的にマイフェアレディで一番ノれる場面。曲が好き。見終わってからもこの歌がずっと頭の中をぐるぐるしてた。あと、「勝ち組の振りはごめんだ」って台詞が地味に印象に残ってる(ヒギンズは「これほど中身がない演説を初めて聞いた」ってこき下ろすけど、それがイライザ父の矜持なのねって思ったし、結構好きな生き方だな、とも)。

・ヒギンズ教授とは裏腹に、ピッカリング大佐は真っ当で人当たりのいい、良識ある大人の男性で素敵だった。必ずしも知性だけが人間の価値ではない、って思ってるし、ちゃんと途中からイライザを「友人」認識してる(だから恋愛関係なんて考えもしない)。ただ「友達ですよ」って答えるまで自覚はない(というか、必要に迫られて初めてイライザとの関係を言語化した)気はするし、この人はこの人で結構変な人ではあるので、友人の髪の色とか目の色をわざわざ気にしないよね、くらいの適当さもあるんだけど(ここでヒギンズが、「茶色!」って乱入してくるのが、数少ないヒギンズのデレ部分で、めちゃくちゃ好きです)。

・あと、ヒギンズ教授の母とピアス夫人がめちゃくちゃ良かった。好き。特にピアス夫人は、こういうシックなドレスいいなあ、素敵な役だなあ、ハマってるし上手いなあ、って、見ている間中ずっと楽しかった。この二人がイライザのことを気に掛けてくれるから、マイフェアレディが楽しいお話になってる気がする。

 

 

 

月組大劇場公演「エリザベート」/1・2回目

ルドルフ役替りを両方見れたのでウキウキ。なんだかんだいって、 やっぱりエリザベートはいいなあ、って思った。良かった。心配していた珠城トートのビジュアルも良かったし(カツラチョイスの勝利)、暁千星ルドルフはちゃんと儚かったし。美弥フランツの歌が やや不安定だったのが意外だったくらい(真風さんが上手くやったので、ちょっと油断してた)。

てことで、諸々感想をテキトーに。

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・珠城トートのビジュアルが予想外に完璧で、めちゃくちゃかっこよかったしハマってたんだけど、じゃあトートという役にハマっているかというとあまりハマってない。多分、声のせい。 珠城りょうって歌声が「明るい」人なんだなあ、ってのを今回実感した。とにかく声に「陰」がない。 明るくて誠実で健全。夏の空のように晴れやか。だから歌うとやっぱりトートとしては違和感が拭い切れない(※)。これは私のファ ーストトートが彩輝直ってのも多少影響してるかも(彩輝直は、 よくも悪くも癖のある声がトートにピッタリだった)。

(※ これを逆手に取って、あくまで誠実に、善良な顔で忍び寄る「死」 ってのはアリだし、ある意味オーソドックスに演るよりタチが悪くて面白い気もするんだけど、 珠城りょうの役作りの方向性は当然そこにない(そんな変化球投げてない)ので、歌声で損してるなあって印象。個人的には、「 善良そのもののようなトート(死)」がちょっと見てみたかったので残念(その方向性で演るなら、珠城りょう以上の人はいないと思う))

・美弥るりかのフランツはわりとオーソドックス。正統派だと思った。ただ、憧花ゆりのがかなり特徴的なゾフィ(=王家に全てを捧げてはいるが、「私情」を捨ててはいない/むしろ巧みに「 王家の利益」と「自分の利益」を摺り合わせてる/100パーセント「皇后の務め」に忠実というわけではない、そういうゾフィ) を打ち出している関係で、フランツがわりとはっきりとエリザベートの「敵」になってる印象( 最初からゾフィとシシィが敵対している(=ゾフィは「 自分の計画」を乱したシシィに感情的な敵意を向けていて、なおかつその敵意にシシィが気付いている)ので、「「ゾフィを否定しない」フランツ」=「シシィの敵」ってことがいつも以上に明確)。 その辺りが損な役回りだと思ったところ。

・でもって、ゾフィ(とフランツ)が「悪役」に寄せてる分だけエリザベートの印象が良くなってて、それがちょっと面白かった。「 エリザベート」って大体、「こいつ身勝手な女だな(ぷんぷん)」 って思いながらシシィを見るのがデフォルトなんだけど、今回に限 っていうと、「十五歳くらいの若い娘が、この姑(と姑の肩を持つ夫)に絶望するのは仕方がないわ」って思えて、自然に感情移入できた気がする。「パパみたいに」の愛希シシィが幼く見えたのも多少影響してるかなあ。

・ヴィンディッシュ嬢がすごく良かった。引き裂くような悲痛な悲鳴も、怯え切って自分を守るように身体を抱き締めるのも、不思議 そうにシシィを見上げるのも、夢を見るような眼差しでシシィの涙 をなぞるのも、とにかく印象的でグッと来た。泣けた。明らかに「おかしい」んだけど、見ていて不安をかき立てられるような精神の不均衡さではなくて、刺々しさもなく、どこか幼子のように純粋で、 狂気とのあわいを漂うようで、一連の流れが夢のように美しかった 。抱き合いながら、通じ合い慰め合う二人(※) に胸が苦しくなった(※ この二人にそう感じたの初めて!)。そういうわけで、今回のベストオブ場面はヴィンディッシュ嬢(というか「病院訪問」)です。 すごく好き。海乃美月is GOD.

・月城ルキーニは歌が安定しててよかった。色気薄め(マダム・ヴォルフへの興味も薄め)のルキーニで、ところどころで「粗暴」なところが見え隠れするのがわりと新鮮(ミルクの場面の「在庫がないんだ!」とか、キッチュとか)。ただ個人的な好みでいうと、 ルキーニはメタ的な狂言回し=他の登場人物とは次元を隔てて欲しいので、ちょっと引いて斜に見ててくれた方が好きかなあ(まあ、 霧矢ルキーニが好き過ぎて視線が歪んでるかも)。

・ルドルフはどっちも良かったんだけど、印象に残ったのは暁千星 (多分贔屓目もある)。全然耽美なルドルフではないんだけど、いかにも育ちが良さそうな甘っちょろいボンボンで、甘言に乗せられた挙句、現実に打ちのめされて、「もはや生きるあてもない」 って力なく洩らすのがすごく良かった。自殺したときルドルフは三十超えてたんだよ、とかいうつまらない現実はノーサンキュー。若 くて人生と人間を心底信じてる純粋な青年が絶望するのが最高なんじゃん(最低な感想)。風間柚乃ルドルフの方が年齢高めで賢そうなルドルフだったので、「 ルドルフって下手に設定年齢上げると難しいんだよなあ」って思った。でも正統派の輝きがあって、これはこれで良かった。

・あと、エルマーやってるときの暁千星のヒゲ。童顔なのに超似合ってて、最高にいいヒゲ。善人ヒゲおじさんの役とかやって欲しい 。若い子に猛烈アタックされてうろたえる感じの、可愛いおじさんの役。超見たい。

・マクシミリアン公爵が珍しく「いい父親」だった気がする。大体この人って、家庭人(貴族)としての義務をほとんど放棄している癖に娘にはいい格好してて、「 無責任で自由奔放な父の犠牲になっているのはシシィなのに、シシィ自身がその事実に気付かず父を慕っている」って構図に毎回引っ掛かるんだけど(※)、今回は無責任なりにちゃんと「 娘を愛している父」で、印象がよかった。 やってることは一緒なんだけど、輝月ゆうまの持ち味かなあ。

(※「パパみたいに」の場面がたまにゾッとするほど冷たい場面に見えるときがある)

・「エリザベート」でいつも理解できないのは、ヘレネの役作り。 演出家の指示なんだろうけど、どうしていつも「道化」なんだろう 。今回、バートイシュルの衣装と髪型がいつも以上にひどいのとや たらとオドオドしているので余計そう思った。 ヘレネとシシィって、「きちんとお妃教育された姉」と「 自由奔放に育った妹」じゃないの? ヘレネがこうだと、フランツがシシィを見初めなくても(ゾフィの思惑通りヘレネと結婚したとしても)、不幸な結果に終わるようにしか見えない。ヘレネはシシィとの対比上、分かり易い美しさはなくとも自らを律することのできる(=そうするように育てられた)女性、として描かなきゃいけないと思うし、そうでないと「フランツが選び違えた」ってのが明確に出ないんじゃないのかなあ(これ、「意志薄弱ヘレネであれば王家の義務に従った(従うしかなかった)=エリザベートの魂は王家に収まるには大き過ぎた」って読ませる意図なら失敗してると思うんですよね。エリザベートが王家に馴染めなかったのは、凄かったとか優れていたとかではなく て、良くも悪くも「向いていなかった」(そしてそこで折れるほど彼女は弱くなかった)、それだけの話なのに、ヘレネがこうだと、「この(大して王家に嫁ぐ覚悟があるようには見えない)ヘレネにだってできることがシシィにはできなかったの?(それってどうな のダメじゃん)」ってなっちゃう気がする)

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・あと、細かいところでいうと、紫門ゆりやのグリュンネ伯爵が良かった。白髪混じりの時が超ダンディ。でもって、台詞がいい。「 バートイシュル行きの馬車が……」が特に良かった。

・今回、カフェの場面のトートの登場(こっそり)を見落とさなかったのが地味に嬉しい。めちゃくちゃ新聞でガードされて隠されて出てきたので、そりゃ「いつの間に!?」ってなるわな、って納得。 あそこ、妙にしれっとした顔で握手するトートが好き。トートと握手したエルマーが、自分の手を見ながら不審そうな顔をするのも好き(やっぱり、「死」の手は冷たいのかしらん)。

・女官たちのドレスが相変わらず素敵。ゾフィのドレスも、ルドヴィカのドレスも素敵。ああいうタイプのドレス(襟元が詰まってて、袖が肘のところで広がってるやつ)に弱いのでウキウキ。いかにも「 制服」風のデザインもツボ。小間使いたちの服ももう少しシッ クでクラシックなデザインになってもいいのに!

・フランツの衣装で一番かっこいい(でもって派手な)のは、一幕終りで着ているやつだと思うので、パレードの衣装はあれにして欲しい。白+赤のツートンカラーの軍服が似合うのなんて、前回宙組の真風涼帆くらい体格に恵まれたフランツだけじゃん……(これ、 霧矢大夢のときも同じこと思ったな)。

・トートの衣装はほぼパーフェクト。ただ、あの、「私が踊る時」 の赤いマフラー?襟巻き?ストール?だけは正直謎。え、なんなのどういう意図なの……。せめてもうちょっと彩度控えめだったらアリだったと思う。あとここの、ジャケットの袖のグラデーション模様が最高に美しい!好き!!

 


 

花組大劇場公演「MESSIAH 異聞・天草四郎」「BEATIFUL GARDEN」

見る前の私「まあ、原田諒だしな……」/見た後の私「まあ、原田諒だしな……」(大体そんな感じ)。

とはいえ、原田諒にしてはわりとよかった。話としてはそこまで壊れてないし、星組ベルリンくらいには無難。ただ、原田諒ってホント、人間が書けない(書く気がない?)のに薄っぺらい人間ドラマで泣かせに走るのが致命的なんだなあって、しみじみ思った。本格ミステリとかならあくまで主役はトリック(人間はそれを描くための駒)だから理解できなくもないけど、ヒューマンドラマで「人が書けない/書かない」って、もはやギャグか何かでは……。

てことで、諸々テキトーな感想。

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メサイアは、原田諒の割には、ってのを抜きにしても及第点ではあるんだけど、「明日海りおにこれ似合うか? わざわざ明日海りおでやる必要あったか?」って視点で点が辛くなるのと、夜叉王丸と島の人々の親交が全く描かれない割に、中盤〜終盤で急に「お前のことを信じる!」「皆はこんな俺を受け入れてくれた!!」みたいなクサイ人情劇をやり始めるのが最高に雑すぎて、「騙されそうになったし騙されたかったけど、やっぱこれ原田諒だわ」ってなる。あと、「彼らが信仰を捨てるわけがない」って台詞だけで、投降ルートを放棄するのもどうなんですかね(せめて、そこで「信仰」について再度言葉を交わす場面が必要なんじゃないの。四郎(夜叉王丸)って、「今生きている人間を救ってこその神であり信仰(「信仰」のために死ぬなんて無意味)」っていう考えの人じゃん(※)。オイオイ、論破足んねえぞー)。

(※ この夜叉王丸の考え方って、まあ、真剣に宗教やってる人から見れば薄いし浅いのかもしれないけど、いわゆる普通の日本人の思考ド真ん中ではあると思うので、そこがブレブレだと、いつも以上に「うーん」ってなった。ここの明日海りおの芝居がとても良かったのでなおさら。まあ、「皆が俺を見殺しにするわけがない」って夜叉王丸自身に言わせるわけにはいかないからなんだろうけど(だからこそ、せめてそこをフォローする場面が必要なのでは……?))

・原田諒の薄味なところとか、史実をなぞるだけなぞってつまらない伝記になりがちなあたりなんかは役者の熱演が救ってはいるんだけど、「後世に……!」とか「改竄されずに……」とか、雑過ぎる単語がポンポン出てくるあたりがさすがにカバーし切れてなくて、その度に「雑だなあ」って我に返っちゃうのが返す返すも残念。急に歴史修正主義みたいなこと言い出すのやめて!あなたたち今までそんな話してなかったでしょ!!

・やっぱ原田諒ってダメだわ(雑な結論)。

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・絵師柚香光が心打ち震えるほどかっこよかった。一曲目の歌がめちゃくちゃ上手かった。ちょっと騙されてるけど、このまま騙し続けて欲しい。あと、鳳月杏が上手いのと、水美舞斗の月代が美しいのが印象的。水美舞斗で武家物どうですかね(個人的に見たいだけです)。

・一樹千尋さんが相変わらず一樹さんで嬉しかった(意味不明)。あと、二人の娘が可愛い&うまい(気がする)。

・脚本的には、この辺りの人間関係を軸にして、夜叉王丸が島原の人々に肩入れする理由をフォローする場面を作らなきゃダメだったですよね(でないと終盤の展開がマジで意味不明)。 夜叉王丸のパーソナリティが分かるエピソードも皆無だし(というか、ベタな「海賊」をイメージさせときながら、そのバックグラウンドが以降何の役にも立たないし何の伏線にもなってないし、むしろ色々と邪魔をしているし)、”天草四郎”を倭寇に設定した意味全くなかったよね……。もうちょい分かり易くはっきり夜叉王丸を「悪人」にして、「いかにして、天下の大悪党が人々のために死ぬに至ったか」みたいな話でよかったのに。

・とにかく、原田諒は人間ドラマから手を引いて、もうちょいロジカルな方向に突き詰めた方がいいと思う。わりとマジで、人情物は向いていない。一回、原作付でハチャメチャドタバタ劇でもやったらどうだろう。恩田陸の「ドミノ」みたいなやつ。

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・「いかにもな野口ショーだよ」って言われて見に行ったら、わりとその通りだった。

・野口ショーの常として、歌詞はダサいし恥ずかしいし、映像のセンスは大分ヤバイ(オープニングは結構好き)。でもわりと好きな感じのショー。なんだかんだ言って、野口ショー好きなんで。ただ、野口ショーとしての出来は、雪組SVとか星組エンターテイナーの方がよかった気はする。

・オープニングとフィナーレの衣装(多分新調)がゴテゴテし過ぎて全然映えなかったのと、仙名彩世の派手な衣装(グラフ10月号で紹介してたやつ)が、色合いのせいで遠目だとめちゃくちゃ変だった(スカステ映像だとそうでもなかった)のと、明日海りおに対する解釈が自分と全然相容れなかったのが、三大残念ポイント。

・明日海りおに武闘派のイメージがないので、「闘牛士に剣闘士とか、野口幸作の明日海りお解釈はどうなっとるんじゃ(どう見ても、文学青年とか立体交差オタクとかやろ(※))」って思っちゃったし、武闘派柚香光が対戦相手ではなくて、ベッタベタの「囚われのお姫様」みたいなのやってたので、余計にええ…ってなった。柚香光って美人だし、悪女とか妖艶な美女なんかはバツグンに似合う人だけど、ピーチ姫ポジションはちょっと柄違いじゃないですかね……(さらわれても、敵をなぎ倒して自力で帰ってきそうだよ……)

(※ 明日海りおでオタクが見たい。内に篭った、他人に興味がない(だから皆に優しい)役が見たいって言い続けているのに叶わないのはなんでなんだろう。明日海りおで一番再演して欲しいのは、彩吹真央の「シルバーローズクロニクル」です。アナベル=仙名彩世が大月さゆ以上に似合わない気がするから無理だな!)

・水美舞斗が大躍進!で嬉しかった。あと歌がよかった(騙されているかもしれない)。

・中詰めの衣装も曲も何もかもが好き。

・あと、柚香光の白い衣装×カラフルなパラソルの場面がすごく良かった。相手役誰だろう? リフトに力技感がなくて、体重がないみたいにふわふわ踊ってて、めちゃくちゃ素敵だった。柚香光が立派に二番手やってるなあってのも嬉しい。

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チケット1枚しか取らなかったし、悲しいことにそれで正解だったんだけど、そろそろ頭バカになって通える演目が花組にも来て欲しい。ストレスなく、明日海りの美貌を眺めたい。てことで、次回の生田先生に盛大に期待します。私、次の花組公演は全力でチケット確保するんだ!(謎フラグ)

 

 

雪組大劇場公演「凱旋門」「Gato Bonito!!」

柴田脚本が好きじゃないので、「望海風斗だしとりあえず一回だけ見とくか」みたいなノリ(※)で見にいったら、意外なことに悪くなかった。びっくりした(※ 再演されるくらいだから名作なんだよね、とは思わないぞ騙されないぞ「バレンシアの熱い花」の悲劇を覚えてるからな、っていう感じのノリ)。

とはいえ、柴田脚本の常として、説明台詞(心の声)過多だし全然ショーアップされてないし分かり易かったら負けだと思ってる、みたいに変にこじれさせた恋愛の話だしキャラクタ的な魅力があるかっていうとあんまりないんだけど。でも意外と嫌いな話じゃなかった。面白かった。謝珠栄演出が好きだから……っていうのは多少影響あるかも(柴田&謝珠栄だと、「黒い瞳」も好き)。

ただまあ、轟悠の声が盛大にヤバかった(※)のと、望海風斗がすごくうまい人(=好き嫌いとか役作りの是非とかハマるハマらない的なことを抜きにすると、技術的にはほぼ欠点のない人だと私は思ってる)ってこともあって、なんでこれを轟悠主演でやったかなあ、とは思った。はっきり言って、素人目には望海風斗の方が「上手い」ように見えちゃうんですよね。これなら普通に望海風斗主演で、ラヴィック望海風斗/ジョアン真彩希帆/ボリス彩風咲奈(※)でよかったんじゃないの……って思っちゃったり(※なお、万が一そうなった場合、彩風咲奈には死ぬ気でがんばってもらうものとする)。

(※ 昔、月組スカピンで龍真咲ショーヴランの声が死んでた時以来くらいのレベルで、手に汗握ってハラハラしたし、見ていてしんどかった。台詞もかなりアレなんだけど、歌の高音部(特に「パララ」って歌う曲)が相当ヤバかった。タカラヅカスペシャルの時も大分キテたけど、あれよりも歌によってはダメなくらい。これがネックで二回目行くかめちゃくちゃ悩んでる)

てことで以下、適当な感想。

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轟悠が演ってるので、イマイチ設定年齢が分かり難い感あり(実年齢が云々っていうより、どちらかというと声と芸風的な問題かな……)。ラヴィックが三十前後~半ばで、ジョアンが二十代半ばくらい? 落ち着いた男性が覗かせる「年相応に若い部分」が、「年不相応に若い(幼い)部分」に見えちゃう瞬間があるのが、ちょっとネックだった気がする。あと、見ている内に段々設定年齢が(思ってたより)若いってことが分かってくるんだけど、最初の印象がガッツリ「年配」なので、ジョアンとの出会い~恋愛初期がちょっと行き過ぎた年の差カップルに見えちゃうのも問題といえば問題(犯罪臭がする的な意味で)。真彩希帆がまた宝塚の娘役としては珍しく、若く見えるタイプの人だから余計に。でも意外と、望海風斗と「友人」やってるのは違和感なかった。不思議。

・望海風斗がわりと自覚して「クズ」をやってる(=露悪的なだけで、全然クズじゃない)、みたいなキャラで、終始素敵だった。「あいつはロマンティストだから」ってラヴィックを評する辺りに、ラヴィックの「甘さ」を心配する色が滲んでいるのがすごくいい友情。ボリスは、「恋愛なんて贅沢は、亡命者という日陰者には身に余る」っていう冷徹な判断が下せて、なおかつちゃんとその判断に従うことのできる賢さのある人、という印象(でもって、その賢さを本人は評価してないっぽいのが個人的にはツボ)。

・ポスターがわりとアレだったし、ずっとオッサンオールバックなんだけど、ちゃんとかっこよくてビジュアルが良かったので、最近望海風斗ファンの自覚が芽生えつつある身としては嬉しかった(贔屓目入っているのは認める)。台詞がいちいちかっこいい。

轟悠の声がヤバかったこともあって、望海風斗(と真彩希帆)が歌う時の安心感、半端ない。

ジョアンはもう少し典型的なファム・ファタル的な役どころかと思っていたんだけど、意外と直接的に魅力が描かれない(魅力が分かり難い)ヒロイン、という印象(柴田脚本の通常運行といえなくもない)。だけど、その難易度高めなヒロインを真彩希帆がすごくうまくやってて、嬉しかった。真彩希帆って、いかにも「美女!」って人では全然ないんだけど、声がキレイだからヒロイン感充分。今回、特にジョアンという役に合ってた気がする。

・「俗っぽいでしょ/そういう俗っぽい幸せが欲しいの」って語る彼女の横顔に、何もかも我慢しなければならない時代に生きていることの鬱屈の影がちらついてて、「そうだよね/誰だって美味しいものを食べて/キレイな服を着て/我慢なんかせずに毎日楽しく暮らしたいよね/愛があればお金なんて、とはとてもいえないよね(そう言えるほど強くも幼くもないよね)」ってめっちゃ共感したし、そういうある意味正直で悪びれないところがジョアンの魅力なんだ、って納得できた(※)。ラヴィックも彼女のそういうところが可愛かったんじゃないかなあ。三ヶ月連絡なかっただけでもう別の男かよ!って思わなかったのが、自分でも意外だった。

(※「欲望に忠実」で、なおかつそれが魅力的な女性というべきか)

・あとは……アンリ。彩風咲奈で待望のヤンデレじゃん!よっしゃ!!、って、途中(アンリのヤンデレ感を察した辺り)からめちゃくちゃワクワクしてたんだけど、一番見せ場であるべき場面(※)で、「狂気」よりも「情けなさ」が先行しちゃってたのがすごく残念だった。アンリって、お金も地位も美貌も持ち合わせた、いいところのお坊ちゃまから迸る狂気!が何より重要な役じゃないですか(多分)。「情けなさ」が先行した結果、単純に「自分を裏切った女に手を出したかっこ悪い男」になってて結構凹んだ。彩風咲奈のヤンデレが見たい一心で解釈が歪んでるような気はする(え、でもそういう役だよね……)。

(※ アンリはこの場面一発勝負みたいな役なので、ここで印象が残せないとあんまり大した役じゃないのである……)

・美穂圭子さんの無駄遣いをちょっと感じた。

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・ラヴィックとジョアンのウキウキデートの場面を覗けばほとんど全場面照明は薄暗いし、ひたすらに辛気臭い話なので、好みは分かれそう。上田久美子の辛気臭い感じが好きな人は結構好きだと思う(偏見)。ショーアップする気のなさが上田久美子以上なので、そこが気になる人は多分ダメだし、ダンスが凝ってて、なおかつ雰囲気タップリに多用されるので、そういうのが好きな人にはオススメ。オープニングからの流れとか、忍び寄るナチスの影とか、振付がめちゃくちゃかっこいい(ただ、全部を台無しをする勢いでガンガン説明ナレーションが入る(憤怒)/柴田脚本のダメなとこって、そういうとこじゃないですかね……)。

・あとセットの出来がめちゃくちゃ良かった。二つの建物がぐるぐる盆で回って、その間を路地に見立てたり、オープンカフェにしたり……質感もいいし、使われ方も素敵だし、一本物くらいのクオリティを感じる。幕開き(開演前のセット)も素敵。セット萌えの人にはおススメできる(あとはセットが映える、いかにもミュージカル!な場面が一つでもあったら完璧だった)。

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・ショーは客席が異様に熱くてビックリした。ガンガン手拍子が鳴って、歌を掻き消す勢い(でもってそれにテンション高く立ち向かう雪組)。ひたすらに暑苦しい。常にハイテンションなので見ていて疲れるショーではあるんだけど、芝居が結構辛気臭いので、このくらい賑やかなくらいで逆に良かったような気はする。楽しかった。

・望海風斗ってあんまりそういうイメージなかったんだけど、もしかしてショースターなんだろうか……、ってちょっと思った。力尽くで無理やりテンションに巻き込んでくる、みたいなはた迷惑なパワーがある辺り。贔屓目入ってる自覚はある。

・タンゴが好きなので、タンゴ風に踊る場面がどれも良かった。

・それを抜きにしても、「黒猫のタンゴ」の場面は比較的落ち着いた雰囲気で、客席に絡む望海風斗が可愛くて、お気に入り。「どうも、ガートボニートです…」でドッと笑った客席は多分、「ヒロシです…」を連想したんだと思う(私は連想した)。

・「今日は何の日か知っていますか?/父の日です/父の日って何をあげればいいの??/何をもらったら嬉しいの?!」みたいなアドリブだったと思う(八割くらい嘘のあやしい記憶)(後半は忘れた)。父の日だったせいか、妙に男性客の多い公演でした。

・あと、彩風咲奈的には開幕の銀橋がハイライトですので、ファンの皆様方はお見逃しなきよう……(私は出てくるところを見逃してめちゃくちゃ後悔してます)。あと、ロケットボーイ(っていうの?)も可愛かった。女装はいつもの藤井大介だなあ(ノルマでもあるのかっていうくらい毎回女装ブチ込んでくるよね)、って思った。彩風咲奈レベルになると、スタイルが凄過ぎて逆に怖い。

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そういうわけで、轟悠の声が復調してたら、後半くらいにもう一回見に行きたい(チケットが手に入るかどうかは謎)。

 

 

星組大劇場公演「ANOTHER WORLD」「Killer Rouge」/2回目


星組二回目。一応これで確保したチケットは終わりなので、三回目どうしようかなあ、って悩んでるところ。芝居は間違いないし、意外とショーの二回目の印象がよかった。席の差(というか、音響の差?)なのかなあ。全体的にうるさいしちょっとガチャガチャし過ぎ(嫌いじゃないけど)、って初回は思ったんだけど、今回は全然そんなことなかった。好きなショーだった。三回目悩む。

てことで、以下テキトーな感想。

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・初日から結構経ったこともあって、紅ゆずるがこなれて来たというか、ちょこちょこ地が見えているというか、全体的に押しが強くなってるような印象。個人的には、前の方が好きかなあ。康次郎としては、少し控えめな部分があった方がキャラクタに合ってる気がする(情けないけど、可愛げがあって、実は意外と目端が利く、っていうキャラクタがナチュラルに見える(あざとくない)ためには、「情けない」ってところが意外とポイントなんじゃないかなあ、と)。

綺咲愛里のお澄さんは逆にキャラ付けのための無理やり感があった「蛇をびったんびったん」の辺りが馴染んできて、キャラクタが立ってきてる。やり過ぎると、恋煩いで死にそうにない「隠れ肉食系女子」に見えて来ちゃいそうでキケンなんだけど、今のところ絶妙なバランスを保ってる(と思う)。まあ、とにかく、綺咲愛里は可愛い。あと、歌が普通にうまく聞こえて震えた。騙されてるような気がしなくもないけど、騙されてる方が幸せなので喜んで騙される。

・「虞や虞や汝を如何せん」のくだりが唐突過ぎて毎回「急に何を言い出したんやコイツ」ってなる。元ネタがあるんだろうけど、混ぜ具合がとにかく雑! なくてもいいような気がするけど、娘役の見せ場が一つ減るから難しいのかなあ。

・娘役といえば、初音ちゃんが意外と活躍するようでいて活躍しないままに終わる(何かしらの因縁があって本筋に絡むと思ってたら特になかった)ので、ちょっと勿体ない感あり。あと、有沙瞳はこういう役(ちゃきちゃき娘?)が似合わんなあ、と(途中の劇中劇みたいなところで本領発揮!なので、理由のあるキャストではあるんだけど)。

・最終的に三途の川ダイブし始めるのがやっぱり分からないまま。あと、生活苦一家心中の親子とかコロリ御一行とか、明らかに三途の川の渡し賃が払えなくない……?、とかは地味に気になる(けどまあ、面白いからセーフ)。

・最後、全員で三途の川ダイブして生き返るエンドでもよかったのになあ、とはちょっとだけ。

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・ショーは礼真琴の編込みに今更気付いて、めちゃくちゃかっこいいやん!!ってテンション上がった。かっこよかった。わりと礼真琴には霧矢大夢を重ねて見てるとこがあるので、霧矢大夢でもそういうファンキーな髪型見たかったわあ…ってこれまた今更なことを思ったり(「STUDIO 54」の髪型とか大好き)。

・わりと好きな曲が多いショーで、それだけでショーって楽しいので、善場面楽しかった。オープニング(多分)でドラゴンのセットが出てくるところだけちょっと笑える。うーんこの中二センス……(嫌いじゃない)。

・礼真琴が狼男で出てきて歌う曲(パラパパみたいなのと、その後の「愛のバッテリー♪」的な歌詞の)がわりと好み。この辺りのストーリーは二回見てもやっぱり謎だったけど……あと、エージェント紅ゆずると怪盗ルージュの場面も設定が相変わらず謎。美しいからいいんですけど。

 

 

 

月組東京宝塚劇場公演「カンパニー」「BADDY」/4回目(中継)

ラストバッディ(中継)見てきた。見始めた頃はまだまだ若手だったんだよなあ……って、宇月颯の退団が無性に感慨深かった。あと綾月せりが87期ラスト、というのにも地味に驚いた。え、そうなのか。歳を取ると、びっくりするくらい時間の経過に鈍感になるな。
そういうわけで以下、頭の悪い感想。

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・とにかく、バッディが自分のツボにドンピシャってことを再確認。歌とかダンスそのものを楽しむ素養がない(淡々と踊られると眠たくなる)人間にとって、ストーリー(あるいは明確な場面設定)があるだけで、ショーってグッと楽しみやすくなるんだよなあ(逆にいうと、「設定」がない場面は個人的にめちゃくちゃハードルが高い)。あと、感情の発露としての「歌(あるいはダンス)」が完璧に機能しているのって単純に見ていて気持ちがいいので、そういう意味で全場面ずっと楽しかった。

・上田久美子って、どちらかといえば芝居寄りというか、ストレートプレイ寄りというか、いかにもミュージカル!という感じの作風の人ではない、という印象だったんだけど、バッディ見る限り、ショーアップしたガチガチミュージカルできる人だしぜひやって欲しい、と思った。ガツンとドラマティックなヤツ。悲劇でいいから、やってくれないかなあ。

・駄作見る度に、糞みたいな台詞と矛盾だらけの脚本で説明セリフ劇やるなら、歌とダンスと舞台装置に全振りして全力でミュージカルしてくれよ(誤魔化してくれよ)(シンプルイズベストって嘯いていいのは、良質なやつだけだゾ)……って思ってたんだけど、その理想形はバッディなんじゃないかしら、ってふと思ったり(※)。

(※ バッディが糞みたいな台詞と矛盾だらけの脚本の駄作、という意味ではないんだけど、バッディをこのまま芝居にしたら、多分控えめにいってもヤバイ感じの駄作に仕上がるし、それと同じくらい(あるいはその上をいく)ヤバイやつを宝塚って定期的にやるじゃないですか。ああいうのも、割り切ってバッディみたいにやってくれたら楽しかった可能性はゼロではないんじゃないかなあ、と……つまりまあ、ミュージカルとしてショーアップしてくれたら、脚本の粗には目を瞑れるんだから(もう少し何とかしてくれませんかね)、っていう切実な話(!))

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・中継ということで、オペラを覗かなくても衣装がバッチリ見えるのが嬉しかった。バードたちの衣装が可愛くて好き。特に、バルーンワンピースみたいなやつ。色合いは派手なのに、三人組がちゃんと調和してて、監視AI(※脳内設定)なのに可愛い!(でもやっぱり、「キケン、キケン」とかの無機質な台詞回しにゾクゾクする)

・衣装といえば、王子と王女の衣装も好き。どの場面もどの衣装もホント完璧だった。二人とも紫メッシュの入った髪形で、その髪色に衣装がベストマッチ。惑星予算強奪の場面の、ちょっとギリシャ風のやつが一番好き。あと、かぼちゃパンツがこれだけ似合う男役ってそうそういないよなあ(暁千星は宝塚における、ベストかぼちゃパンツァーだよなあ)、と毎回感心する(タカラヅカの男役にかぼちゃパンツが似合う必要があるかっていうと……まあ、ないんですけど)。

・ベロアのスーツも良かったし、グッディの青いドレスも赤いドレスもホタテドレスもプリティ戦闘服(違う)も素敵だったし、衣装に関してはホント言うことがない(嘘。エビに扮したポッキーが下半身タイツ(しかも光沢あり)なことだけは、衣装担当に物申したい)(これじゃポッキーが変態じゃん……)。

・グッディバッディとクール&王女の両方を映そうとしてどっちも中途半端になってたあたりで「もうちょっとなんとかできたやろ……」って思った以外は特にカメラも不満なし。まあ、可もなく不可もなく。宙組東京千秋楽を思えば何だって許せる、かもしれない。

・人類が滅びた地球でAIたちがキャッキャウフフしてるのがピースフルプラネット、っていう脳内設定をいまだに引きずってるんだけど、人類最後の戦争(=最大規模の世界大戦)があったと仮定すれば、宝塚っていう微妙な田舎が首都になってるのも納得できるな(=大都会は完璧に焦土と化したからね仕方がないね)、ってちょっと妄想した。

・怒りのロケットが相変わらず心躍るステキな場面で、めちゃくちゃテンション上がって楽しかった。ワクワクした。「私たち今怒ってる/生きてる/涙流してる」のあたり、歌詞が完璧。ホント好き。ここで初めて、グッディたちは「生まれた」んだわ(AI設定を引きずってる)。

・他の組でも上田久美子ショーが見たい。わりと切実に。

 

 

 

「ジュマンジ/ウエルカム・トゥ・ジャングル」

宝塚以外の予定がないGWってどうなのよ。九連休の無駄遣い過ぎでは……(※)って発狂しそうになったので、ちょっと気になってた映画を見てきた。よし、私ちゃんとGW満喫してるな。しかし、宝塚のライブ中継以外で映画館来るのっていつ以来だろ?「君の名は」以来?(てことは、2017年は一度も映画館で映画見てないのか……)

(※ あまりに暇すぎて仕事が不安になってきたのと社畜の血が騒ぎ出したせいで明日出勤することにしたので、もはや九連休ですらない。ホント、社畜ってサイテーですねダメですね)

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・そういうわけで、ジュマンジ。タイトルの意味は不明 。実は続編(リメイク?)らしいのだけど、1を知らなくても全然問題なかった。「ゲームの中に閉じ込められて生命を賭けたプレイを強制される」っていうとこだけ共通してるのかなあ(海岸でゲームを拾うところから始まるので、1のラストで海にゲームを流したのかもしれない←処分する気だったなら、もうちょっと確実にしとけよ感/言いがかりだったらゴメン)

・とにかく、その罠としか思えない暗黒ゲームの来歴とか謎とかには一切触れられず、潔く舞台設定に徹している印象。プレイする人(プレイする気を見せなかったはずの可哀想なアレックスさえも)を閉じ込めて強制的にプレイさせるヤバイゲームです以上説明終わり!オッケー?そんな感じ(まあ、あれやね、リングでいうところの呪いのビデオ的なアレ)。

・そこの説明が一番気になる人に向かないかもしれない。私は気にならないので楽しかった。

・現実世界とは全く異なるアバター(ゲームキャラクタ)に閉じ込められた高校生たちが各々のスキルを活かしてクリアを目指す中で段々友情を深めてロマンスを育むというベターな展開なわけですが、随所にベタな笑いどころがあって面白かった。あと、主人公(典型的オタク/アメリカ的にいうとナード)が自称オタクってだけの気弱そうなイケメンじゃなくて、ちゃんとぽい外見なのがよし(でもマーサは最初から結構可愛い)。

・折角ステータスが出るんだから、能力値とかレベルとかの概念があっても面白かったのに(ゲームの醍醐味って「成長」ってとこあるじゃん!)…とはちょっと思った。

・あと、スキル構成的に全員揃ってなきゃクリアできなさそうなゲーム設計なので、五人(又は欠けてる人数)揃ってゲームに触れなければ取り込まれない……みたいな設定にしなきゃ罠過ぎるのでは(アレックスマジ不幸)……とは多少。

・べサニーが凄くいいキャラクタで一番好き。現実世界ではインスタ映えに命賭けてる系女子で、ゲームの中では豊満ボディがチャームポイント(!)の中年オヤジ。なのにめっちゃ可愛い。マーサに色仕掛けを教えるところ、オッサンの見た目で色っぽいのがさすがだった(でもって間違いなく美人なのに残念な色仕掛けを次々にくり出し、最終的に腕力で解決するルビーさん、ベタだけどめっちゃ面白い)。

・最後、アレックスと再会するくだりで普通にホロリとしてしまった。だってべサニーもアレックスもいいヤツなんだもん。

・フリッジだけは「コイツ、サイコパスちゃうか」と思ってしまった。三回死んだらヤバイって知ってるはずなのに、ためらいなくスペンサー突き落とすのヤバくない……?(せめて、「あんなガタイしてて、なんで俺に簡単に突き落とされるんだよ」みたいな展開じゃないと怖すぎない…?)

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そういうわけで、普通に二時間楽しめるので、何か映画見たいなーって人にはオススメします。傑作ではないけど、笑って、ビビって、ホロリとできる良作。たまには映画もいいなあ。

 

星組大劇場公演「ANOTHER WORLD」「Killer Rouge」/1回目

落語の谷先生は信頼してよかったんや!!

感想を一言で言うならコレ。ただまあ、信頼し切れなかったせいで2枚しかチケット抑えてなかったので、賭けには負けた気はする……(谷正純には色々裏切られてるからね仕方がないね……)元ネタがあるとはいえ、落語ものならこれができるのに、オリジナルだとなんでああなるかなあ、とはちょっと思った(!)

てことで中身のない感想をチマチマと。

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・芝居最初のショー部分は手堅く華やか。谷正純ってショーはやらないのかな?(やってた?) ジプシー男爵の時のデュエットダンスとか、瀬奈月組時代のヤバイ駄作の時のアイリッシュダンスとか、地味に芝居中のショー場面が素敵(※)なので、ショーも見てみたい気がする(※芝居演出上必要じゃないショーシーンを長々と突っ込むせいで評価できない時も多々あるけど←最初からショーなら評価できる!)

・とにかく、最初から最後までめちゃくちゃ面白かった。こういう、情けないけど可愛げのある役って、紅ゆずるにハマってる。あと、ちゃんとかっこいい。関西イントネーション完璧。いやあ、いいね!

・落語の元ネタはほとんど分からないけど、「せをはやみ〜」のくだりだけは聞いたことあった。でもまあ、元ネタ知らなくても見るのに支障は全くない、かな(知ってたらもっと面白い可能性はあるのかも)。

・現世で遊興三昧、遊び尽くした(から、冥土で遊んだろ!ってふぐ肝食べて死んだ)と豪語する遊び人が礼真琴で、これはどっちかっていうとキャラ違い(個人的には、礼真琴にそういうイメージがない)なんだけど、やってることが相当吹っ飛んでてアホなので、賢そうな礼真琴がやるくらいでちょうど良かった気はする。かっこよかったし。あと、幇間(多分)がひろ香祐で地味に嬉しかった。ハマり役。

・貧ちゃんのくだりはセルフパロディなのか、落語に出てくる貧乏神はみんなこういうキャラ(手塚治虫的な意味でのスターシステム)なのか謎。でも、面白いからオッケー。

・冥土歌劇団にも笑ったし、植田紳爾に絡めたちょっとブラックなとこも面白かった。まだまだお元気なんだろうね(じゃないきゃできなさそう)。

・ヒロインであるところのお澄さんだけちょっとキャラ弱いかな?って思ったんだけど、蛇のくだりでベタだけどキャラ付けされるし、ほとんど言うことがない(なんでこれがオリジナルでできないのか…)

・喜六が七海ひろきだと気付いてなくて、閻魔大王が七海ひろきかな?→明らかに違うゾ!?ってビックリした。最後の挨拶部分でやっと気付いて、「こっちか!」ってなった。不覚。でもいいキャラだよね、喜六。五日前の鯖はヤバイわ。ふぐ肝と同レベルの自殺だわ。

・最後のオチというか、なんで全員で三途の川ダイブしたのかだけが分からなかったんだけど、もうどうでもよくなるくらい楽しかったので、どうでもよくなった。いやまあ、ブチ生かされたら蘇るんちゃうの?そこは怨霊化なの?とか、お裁き受けたらほとんどが地獄行き(虫殺しただけで地獄行きなら大半は地獄行きだし)なら、ずっとお裁き受けずに冥土繁華街にいたらいいよね?とか、諸々あるのはあるんだけど。面白かったのでセーフ。

・白装束から何の説明もなく、派手な衣装に着替えてたのが一番面白かった。そのお着替えいる?いるの!?

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・ショーは斎藤吉正らしい賑やかな(ちょっと賑やか過ぎるくらいの)作品。

・ストーリーで綴る部分が結構あるんだけど、歌詞が聞き取れないせいでよく分からなかったのがちょっと残念。赤ずきんちゃん→マッチ売りの少女みたいなとことか、正義の味方紅ゆずる!みたいなところとか……(七海ひろきが怪盗ルージュみたいな役で女装してるんだけど、ハイパー美女だった)。

・聞き覚えのある曲がいっぱいあったので、歌謡曲とかアニメソング盛り盛りだったのかな(←聞いたことがあるというのは分かっても、タイトルは特定できない)。とりあえず、「薔薇は美しく散る」を使ってるのはなんか嬉しかったというか、面白かったというか。

・桜のロケットは、ちょっと季節外れのような気がしなくもないけど、衣装が可愛かった!(カツラも可愛かった!)104、って人文字作るのも好き。