タカラヅカメモ

全組観劇のライトファンによる宝塚感想置き場。

宙組大劇場公演「白鷺の城」「異人たちのルネサンス」/1・2回目

めちゃくちゃ期待してた宙組は、絶対面白いだろって思ってた大野ショーが不発で、(王妃の館はよかったけど)オリジナルはどうなんだろう……って心配半分だった田渕芝居がアタリという意外な結果。「白鷺の城」には期待してた分、ガッカリ感が大きい(そのせいで必要以上に評価が辛くなってるかもしれない)。大野拓史が好きなだけに凹む。あとチケット確保でちょっとミスってW観劇日程を組んでしまったせいで一層ショーが辛かったってのもあるかも(続けて見るとやっぱり粗がね……)。

てことで、諸々テキトーな感想。

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・「白鷺の城」の最大のネックは、説明台詞が多すぎる上にダサイことで、しかも救われないのは、その割に全然分かり易くなってない(※)ことです。「ショーなんだから雰囲気でオッケー」っていう割り切りが全然できてない。説明したいならせめて歌詞(=歌)でやってくれなきゃ辛すぎる。

(※ これは構成のせいもあって、ざっくりいうと、「現在→四百年前→回想(六百年前)→四百年前の後であり現在よりも少し過去→八百年前→現在に戻る→その後」って感じの流れなんだけど、巻き戻しに巻き戻しを重ねたせいで無駄に分かり難くなってるんですよね。物語の起点を「四百年前」に置いた方がスッキリしたんじゃないかしら……)

・「ホントはこの題材で芝居がやりたかったのでは」って一緒に見に行った人が言ってて、それにはちょっと頷けたんだけど、いわば予告編の今回がこの出来じゃあ、本編も(芝居でやっても)絶対面白くないよなあ、って思った。思っちゃった。予告編(ショー)なら、ちゃんとクライマックスとか映える場面とかキャッチーな台詞とか、とにかく「ここが大事なの!」「これを真風宙組でやりたかったの!」ってとこを切り取ってくれなきゃダメなんじゃないですかねえ(ダッサイ説明台詞はノーサンキュー!)。「本編に出てくる要素で構成されていて」「面白そう」だったらオールオッケーなのが(ストーリーを理解させる必要はないのが)予告編だし、ショーもそうじゃん……?

・あと、輪廻転生もの(=通し役なのがトップコンビ+アルファくらいしかいない)ってこともあって、ストーリーショーなのに「キャラクタが立っていない」(なおかつ場面単独で印象的な役もない(※))というのが、ちょっと残念ポイント(※ 歌にも振り付けにも響くものがなかった、ってのもある)。ショーとしても芝居としても中途半端で、上田久美子のバッディは相当うまくやってたんだなあ、って改めて思った。

・まあ諸々文句は言ったけど、宴の場面で盆が回って出てくるときの真風涼帆の色男ぶりは良かったし、武者軍団が銀橋に並ぶところ(テンション上がる)とか、チョンパ(?)の華やかさとか、最後の総踊りとか、芹香斗亜の赤の似合いっぷり(特に平安貴族モードが最高)とかはすごく好き。松本先生の使い方はうまいことやったな、って思った(でも台詞はエコー効き過ぎてて笑うからなしで頼みたい)。あと星風まどかは意外と高飛車なのが似合うというか、ツンとした顔をして見せるのが魅力的な人なのねっていうのは嬉しい発見だった。すごくキュート。

・あとどうでもいい話として、和物化粧の真風涼帆がびっくりするくらい水夏希

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・でもって、田渕大輔いけるやん!!って大歓喜したお芝居。

・とにかくベタなメロドラマなんだけど、特別大きな瑕疵もなく、破綻もなく、メインキャラクタはややマンガ的なきらいはあるけどきっちり立ってて、衣装も全然着替えないけど素敵で(なおかつ豪華で)、主人公の身勝手さに閉口するような展開でもなければ、悪役がお間抜けすぎて気の毒になり過ぎることもなく、魅力の分からないヒロインということもなく、舞台転換はスムーズで、セットも素敵という、おおよその項目で平均点以上を取ればこうなるな!というお手本のような良作(だけどつまんねーわ!っていう人がいても意外ではないし、大好き!傑作!!っていう人がいても驚かない。私は好きです)。

・いかにもミュージカル!な場面がないのと、役が少なめなのと、わりと淡々と進んでストーリー的な盛り上がりに欠けるあたりが、ネックといえばネック。あと、カテリーナがひたすら周囲の思惑に翻弄されるヒロイン(なおかつ人格的魅力はほとんど描かれないにも関わらず、欲望の対象になり続ける女性)なので、好き嫌いは分かれそうではある。私は好きです(二回目)。

・田渕大輔の演出は回想の書き方に特徴があるのかなあ、って印象で、それが個人的に結構ツボなので評価が甘くなってるような気はする(「王妃の館」でのルイ十四世の回想場面とか、今回の幼少期の入れ方とかめちゃくちゃ好み)。

・カテリーナは一見「(男性視点で)都合のいい女」なんだけど、真風レオナルドの恋着の向け方(対象)が、あくまで「カテリーナの瞳にかつてあったはずの希望の光」なので、自分の「幻想」を押し付けるような嫌らしさがなくて、ロレンツォの有能だけどちょっと歪んでる(カテリーナの人格には価値を認めていない)ところと対照的ですごく良かった。ただまあ、ロレンツォはレオナルドとカテリーナの関係をすぐに察する気がするし、それを愉しむような性質の悪さもありそうだよなあ、とは思った(芹香斗亜がまた、性質の悪い色男を余裕たっぷりにやっててかっこいいんだ。赤が似合うし、ウェーブがかった黒の長髪も似合うしで、ビジュアルも完璧)。

・主人公であるレオナルドも、直接的に美点が描写される場面がほとんどないんだけど、逆に言うと、脚本的に欠点が描かれてるわけでもないので、じゃあ真風涼帆がかっこいいから無問題だな!!って印象。脚本にさえ足を引っ張られなければ、タカラジェンヌはちゃんとかっこいいし、かっこよくみせる方法を知ってるし、かっこよく演ってくれる(でもってその「余白」が田渕大輔の脚本にはちゃんと残ってる)。

・芹香斗亜が色悪というか、「悪いけどそれがかっこいい」人物として描かれているのとは対照的に、愛月ひかるのグイドはもう少し踏み込んだ、気味の悪い、生理的嫌悪感さえ感じさせる悪役で、キャラクタに対しての好悪は別にして、なかなか面白かった。これは多分、私がカテリーナとの関係に不穏な深読みをした(「手塩に掛けた」とか「許しを請うことを教えられた」とかの台詞に性的な(あるいはもっと陰惨な)匂いを嗅ぎ取ってしまった)せいもあると思う。

・あと引っかかったところでいうと、ロレンツォがちゃんと生きているってことを匂わせとかなきゃいけないんじゃないの(工房メンバー&サライが駆けつけた後、転がっている人間の生死を確認せずに捌けていくのは不自然だぞ)っていうのはちょっと思った。ジュリアーノの死を確認する→ロレンツォ様はまだ息があるぞ→運び出して退場、でよくないですかね(愁嘆場の横でそれやるの微妙かしらん)。

・「(父と兄の)後姿を誇らしい気持ちで見ていた」ってジュリアーノに言わせるあたりが、田渕大輔好きだなって思うところで、優秀な兄に対する鬱屈した思いが滲んでて良かった。結局のところ、ジュリアーノがカテリーナを求めるのは、彼女に惚れたからではなくて、「兄の物を奪いたい(=兄よりも優れていると示したい/意趣返したい)」「兄に認めてもらいたい」だけなんですよね(だからこそ、一層カテリーナという人が哀しい)。こじらせたブラコンだぁ、って思って見てた。あとロレンツォがちゃんと有能かつ自分が有能ではないと判断した人間の価値を認めていない(しかもそれを隠さない)男に見えるので、「この兄ならジュリアーノが鬱屈するのもしゃーないな」って同情した。

・細かいツボとしては、「私は自分が何を望んでいるかも分からないのに」っていうカテリーナの台詞と、彼女を抱きとめたレオナルドの「君の望みは俺が知っている」っていうやり取りとか。ロレンツォは偉大な男だと示して見せるクラリーチェの誇らしげな様子とか(ロレンツォが正妻たるクラリーチェに敬意を払ってみせる描写があってもよかったと思う!見たかっただけ!!)(ロレンツォは賢い人間が好きだと思うから、クラリーチェも結構好きだと思うの/小鳥を殺させたくだりなんかは、「女というものは愚かなことをする」くらいのこと思ってそうだけど)。「孤児に変な夢を見せるのはやめてくれ」っていう酒場の女将の親心とか。胸糞一歩手前で物哀しさを感じさせるサライというキャラクタとか(ちゃんと一貫してるので、「そりゃこの立場ならそうするのを一概には責められないよなあ(人間だもの)」ってすごく切なかった)(もうちょっとパッツィが「お前が賢ければ金を得られるが、愚かであれば命を失うのだ」みたいに脅してあげて、サライの裏切りに一定のエクスキューズを与えても良かったとは思うけど)。

・で、フィナーレがこれまたすごく良かった。田渕大輔にも一度ショーを作って欲しいなあ。ラインダンスの衣装がとても良かったのと、娘役群舞の振付(フォーメーション)が印象的。あと男役群舞で裾をマント風に捌くのがめちゃくちゃかっこよかった。好き。

・羽根が真風涼帆だけなのは、星風まどかが怪我の影響で羽根を背負えないからなのかな?(星風まどかが背負ってないのに、芹香斗亜が背負うわけにもいかないだろうし)。豪華衣装着てるのが真風涼帆だけで、これはちょっと仲間外れ感があって寂しかった(でも衣装と羽根の取り合わせはすごく良かった)。

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そういうわけで、星風まどかがデュエットダンスに復帰するようなら後半にもう一回行こうかなあ(チケットは何とかする前提)って悩み中。やっぱりデュエットダンスはトップコンビで見たいんですよね(というか、トップコンビじゃないと意味がないというか……)(もちろん、代役の人は過不足なく務めてたんだけど)。ショーが厳しかっただけにちょっと悩む……。