タカラヅカメモ

全組観劇のライトファンによる宝塚感想置き場。

花組大劇場公演「MESSIAH 異聞・天草四郎」「BEATIFUL GARDEN」

見る前の私「まあ、原田諒だしな……」/見た後の私「まあ、原田諒だしな……」(大体そんな感じ)。

とはいえ、原田諒にしてはわりとよかった。話としてはそこまで壊れてないし、星組ベルリンくらいには無難。ただ、原田諒ってホント、人間が書けない(書く気がない?)のに薄っぺらい人間ドラマで泣かせに走るのが致命的なんだなあって、しみじみ思った。本格ミステリとかならあくまで主役はトリック(人間はそれを描くための駒)だから理解できなくもないけど、ヒューマンドラマで「人が書けない/書かない」って、もはやギャグか何かでは……。

てことで、諸々テキトーな感想。

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メサイアは、原田諒の割には、ってのを抜きにしても及第点ではあるんだけど、「明日海りおにこれ似合うか? わざわざ明日海りおでやる必要あったか?」って視点で点が辛くなるのと、夜叉王丸と島の人々の親交が全く描かれない割に、中盤〜終盤で急に「お前のことを信じる!」「皆はこんな俺を受け入れてくれた!!」みたいなクサイ人情劇をやり始めるのが最高に雑すぎて、「騙されそうになったし騙されたかったけど、やっぱこれ原田諒だわ」ってなる。あと、「彼らが信仰を捨てるわけがない」って台詞だけで、投降ルートを放棄するのもどうなんですかね(せめて、そこで「信仰」について再度言葉を交わす場面が必要なんじゃないの。四郎(夜叉王丸)って、「今生きている人間を救ってこその神であり信仰(「信仰」のために死ぬなんて無意味)」っていう考えの人じゃん(※)。オイオイ、論破足んねえぞー)。

(※ この夜叉王丸の考え方って、まあ、真剣に宗教やってる人から見れば薄いし浅いのかもしれないけど、いわゆる普通の日本人の思考ド真ん中ではあると思うので、そこがブレブレだと、いつも以上に「うーん」ってなった。ここの明日海りおの芝居がとても良かったのでなおさら。まあ、「皆が俺を見殺しにするわけがない」って夜叉王丸自身に言わせるわけにはいかないからなんだろうけど(だからこそ、せめてそこをフォローする場面が必要なのでは……?))

・原田諒の薄味なところとか、史実をなぞるだけなぞってつまらない伝記になりがちなあたりなんかは役者の熱演が救ってはいるんだけど、「後世に……!」とか「改竄されずに……」とか、雑過ぎる単語がポンポン出てくるあたりがさすがにカバーし切れてなくて、その度に「雑だなあ」って我に返っちゃうのが返す返すも残念。急に歴史修正主義みたいなこと言い出すのやめて!あなたたち今までそんな話してなかったでしょ!!

・やっぱ原田諒ってダメだわ(雑な結論)。

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・絵師柚香光が心打ち震えるほどかっこよかった。一曲目の歌がめちゃくちゃ上手かった。ちょっと騙されてるけど、このまま騙し続けて欲しい。あと、鳳月杏が上手いのと、水美舞斗の月代が美しいのが印象的。水美舞斗で武家物どうですかね(個人的に見たいだけです)。

・一樹千尋さんが相変わらず一樹さんで嬉しかった(意味不明)。あと、二人の娘が可愛い&うまい(気がする)。

・脚本的には、この辺りの人間関係を軸にして、夜叉王丸が島原の人々に肩入れする理由をフォローする場面を作らなきゃダメだったですよね(でないと終盤の展開がマジで意味不明)。 夜叉王丸のパーソナリティが分かるエピソードも皆無だし(というか、ベタな「海賊」をイメージさせときながら、そのバックグラウンドが以降何の役にも立たないし何の伏線にもなってないし、むしろ色々と邪魔をしているし)、”天草四郎”を倭寇に設定した意味全くなかったよね……。もうちょい分かり易くはっきり夜叉王丸を「悪人」にして、「いかにして、天下の大悪党が人々のために死ぬに至ったか」みたいな話でよかったのに。

・とにかく、原田諒は人間ドラマから手を引いて、もうちょいロジカルな方向に突き詰めた方がいいと思う。わりとマジで、人情物は向いていない。一回、原作付でハチャメチャドタバタ劇でもやったらどうだろう。恩田陸の「ドミノ」みたいなやつ。

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・「いかにもな野口ショーだよ」って言われて見に行ったら、わりとその通りだった。

・野口ショーの常として、歌詞はダサいし恥ずかしいし、映像のセンスは大分ヤバイ(オープニングは結構好き)。でもわりと好きな感じのショー。なんだかんだ言って、野口ショー好きなんで。ただ、野口ショーとしての出来は、雪組SVとか星組エンターテイナーの方がよかった気はする。

・オープニングとフィナーレの衣装(多分新調)がゴテゴテし過ぎて全然映えなかったのと、仙名彩世の派手な衣装(グラフ10月号で紹介してたやつ)が、色合いのせいで遠目だとめちゃくちゃ変だった(スカステ映像だとそうでもなかった)のと、明日海りおに対する解釈が自分と全然相容れなかったのが、三大残念ポイント。

・明日海りおに武闘派のイメージがないので、「闘牛士に剣闘士とか、野口幸作の明日海りお解釈はどうなっとるんじゃ(どう見ても、文学青年とか立体交差オタクとかやろ(※))」って思っちゃったし、武闘派柚香光が対戦相手ではなくて、ベッタベタの「囚われのお姫様」みたいなのやってたので、余計にええ…ってなった。柚香光って美人だし、悪女とか妖艶な美女なんかはバツグンに似合う人だけど、ピーチ姫ポジションはちょっと柄違いじゃないですかね……(さらわれても、敵をなぎ倒して自力で帰ってきそうだよ……)

(※ 明日海りおでオタクが見たい。内に篭った、他人に興味がない(だから皆に優しい)役が見たいって言い続けているのに叶わないのはなんでなんだろう。明日海りおで一番再演して欲しいのは、彩吹真央の「シルバーローズクロニクル」です。アナベル=仙名彩世が大月さゆ以上に似合わない気がするから無理だな!)

・水美舞斗が大躍進!で嬉しかった。あと歌がよかった(騙されているかもしれない)。

・中詰めの衣装も曲も何もかもが好き。

・あと、柚香光の白い衣装×カラフルなパラソルの場面がすごく良かった。相手役誰だろう? リフトに力技感がなくて、体重がないみたいにふわふわ踊ってて、めちゃくちゃ素敵だった。柚香光が立派に二番手やってるなあってのも嬉しい。

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チケット1枚しか取らなかったし、悲しいことにそれで正解だったんだけど、そろそろ頭バカになって通える演目が花組にも来て欲しい。ストレスなく、明日海りの美貌を眺めたい。てことで、次回の生田先生に盛大に期待します。私、次の花組公演は全力でチケット確保するんだ!(謎フラグ)