タカラヅカメモ

全組観劇のライトファンによる宝塚感想置き場。

宙組大劇場公演「神々の土地」「クラシカルビジュー」/2回目

クラシカルビジューの楽しみ方が二回目にして分かってきたかもしれない。なんか嫌いじゃない気がしてきたし、次見たら好きって言い出すと思う。神々の土地は既に傑作と確信した。

とりあえずチケットを買い増しして、前楽も抑えました(!)。ぬるファンだけど、たまに頭おかしくなってこういうことします。幸せなので問題はありません。

 

初回に比べて毒が抜けて、ちょっとオリガへの態度を軟化させた、ドミトリーとイリナに対してはデレデレしだしたユスポフくんを見てると、「この人単にドミトリーを皇帝にしたかっただけでは?」って思えてきた(※)。

(※…ユスポフくんはイリナも血友病の因子持ちってこと忘れてるとしか思えないけど大丈夫ですかね……ドミトリーが即位しちゃったら、結局あなたが好きな二人は結ばれないよ?大丈夫なの!?いや、クーデターが成功してもドミトリーに皇帝になる気はないと思うし、どっちにしろイリナとドミトリーは結ばれないとは思うんだけど)

ドミトリーとフェリックスの友情が深まってきたせいもあるかも。二回目はなんか、ユスポフくんの報われない(けど結構本人幸せな)片思いの物語に思えた。なんだかんだ、ドミトリーはフェリックスの思いを分かってるし、受け入れてないけど、否定はしてないよね。「友情に感謝するよ」の辺りとか。

そんなフェリックスがドミトリーを皇帝に仕立て上げたい一心で、「大公が民のためにやってくれたぞ!」って盛大に民衆を煽ったのに、結局その世論を利用したのはレーニン率いるボリシェヴィキという報われなさ。なんという皮肉。

 

いいね!ボタンを手にして神々の土地を見たら、最初から最後まで連打しすぎて、任官式くらいでボタンが壊れる未来が容易に想像できちゃうのが我ながらアレなんですが、一番滾るのは任官式で、一番泣きそうになるのはオリガと皇后の場面で、一番ドキドキするのはドミトリーによる「来ちゃった」のところです。「バカなことをした……」って自嘲するの、控えめに言っても最高過ぎない……?

 

宙組大劇場公演「神々の土地」「クラシカルビジュー」/1回目

(S席1階21列サブセンター上手側)

明るい話ではないし、かといって星逢みたいに泣かせに来ている話でもないので好き好きあるとは思うけれど、個人的には上田久美子作品の中で一二を争うくらいに好き(翼ある≒神々>星逢>金色>月雲)。

脚本もいいし、演出もいいし、衣装も美しいし、セットも綺麗。曲だけ少し惜しい(でも悪くない)。朝夏まなとのサヨナラにいい作品が当たったことが、素直に嬉しい。ショーは初見の感触だとちょっと不発なんだけど、芝居だけで通えるし通う気満々。

上田久美子って毎回思うけど、わりとチャチになりがちなコスプレ時代物でも、安っぽくなくて品があって美しいのが凄い(完全フィクションの金色の砂漠でさえ、そうだった)。

神々の土地も、史実を元にキレイに再構成(単純化)した話なので、安っぽかったら致命的なんだけど、ちゃんと重厚感があってリアルで、でも品があって夢のように美しい。あと、伶美うららの使い方が完璧。まあ「翼ある人びと」と同じ路線ではあるんだけど、これだけ美しかったらやらせたいですよね分かります。当然支持します。

けして明るい話ではないんだけど、イリナとドミトリーこの二人に後悔がないので、後味が悪くない。清々しくて、爽快感さえある。「自らの信念に従って生きよう」という言葉通り、信念に生きて、信念に殉じる。そこに後悔はないし、お互いに「相手はそうするだろう」という理解と信頼がある。
ペルシャに赴くドミトリーをイリナは引き止めないし、イリナが引き止めないことをドミトリーは知っている。亡命を拒んでロマノフに殉じたイリナの死を、彼女の信念を、ドミトリーは完全に理解してるんですよ。

最後、朝夏まなとのモノローグで語られる彼女の死が、「彼女がそうすることを僕は知っていた」と言わんばかりでグッと来ました。でも朝夏ドミトリーは「そんなイリナだから愛している」というわけではなくて、「イリナは当然そうするだろう」(そしてそのこととは全然無関係に)「僕はイリナを愛している」なんですよ。ちょっと最高過ぎない?

逆に胸が苦しくなるのは、オリガと皇后アレキサンドラ。
結局この話って、悪い人がいない(時代の流れだからどうしようもない)(ラスプーチンでさえ”悪”ではない)お話なんだけど、ロマノフの滅亡を消極的に後押ししたのはこの二人じゃないですか(いや、一番はニコライ二世なんだけど、作中でそこまで書き込まれないので)(ニコライ二世の長台詞は彼がいい父親であると示すと同時に、どうしようもなく為政者に向いていないということが明らかで、これはこれで辛い)。

最悪の結末を予感しながら母に殉じたオリガの決意と、「こんな国など滅べばいい」というところまで振り切れることもできなかった皇后の心境を思うと、やたらと辛かった。知ってて諦めたオリガはともかく、理解さえしていなかった皇后は特に。

あと、真風フェリックスはこのあたりを冷笑的に見ている感があって非常に素敵。
いい人ではないし、いい人になり過ぎないだけの毒がちゃんとある。自分なりの貴族の義務を心得た人物で、だからこそ、皇族の義務を(どういうかたちでも)果たそうとしない皇帝一家を心底見下している。

オリガのこと嫌ってるのは恋敵だからでは全然なくて、そもそも恋敵として認めてさえなくて。ぶっちゃけオリガとドミトリーが結婚しても、恋愛的な意味では何の痛痒も感じないんじゃないの?って気がする(オリガの人格を認めてないから)(恋人がペットを可愛がっても嫉妬はしないでしょ、みたいな)(我ながらひどいな)。
オリガは勿論、素敵な女の子でドミトリーの愛に足る女性なんだけど、フェリックスの主観的には……という話。

でもドミトリーとイリナはそうではないし、そうではないことをフェリックスは知っているので、オリガとの婚約にあれだけ拒否感を示すんじゃないかなあ。そこにあるのは、「お前ほどの男が、あんなつまらない女に操立てして生きていくのか!?」っていう怒り(※)なんですよ。もちろん、「もっと明確かつ直接的に皇帝の首を挿げ替えたい」「平和的解決方法に価値を認めていない」っていう政治的な意図も混じっているとは思うけども。

(※…これは同時に、「あの一家に忠義立てして生きていくのか!?」っていう怒りでもあって、フェリックスはドミトリーが(フェリックスの主観的に)ドミトリーに値しないくだらない存在に浪費されるのが耐え難いんですよね。ドミトリー(イリナ)の愛し方とフェリックスの愛し方って多分正反対で、余計にフェリックスは「自分が言わなきゃ」ってなるんだと思う)

フェリックスにとってイリナという女性は、「ドミトリーの愛に値する女」だし、もっというなら「ドミトリーを愛しても許せる女」で、「俺のドミトリーが愛した素晴らしい女性」なんだと思う。だから、「嫉妬した?」に「どっちに?」って答える。そりゃ求婚するよね。「愛する男が愛する女」を手に入れたい、というのは、フェリックスみたいな人間にとっては至極自然な発想だもん。そうしても、ドミトリーは手に入らないぞ、とは思うけど(そこは多分、フェリックスも理解してる)。

フェリックスのドミトリーに対する感情は、「目的を達成する過程で手に入れられたらいいくらいの感じ」とプログラムにあって、それはフェリックスというキャラクタ的に納得できるんだけど、土曜見た限りではもう少し熱があったような気がしなくもなかったので、色々妄想できて面白かった。
もしかすると、「俺が愛するドミトリーは、けしてフェリックス・ユスポフという人間を愛したりはしない」くらいの自虐的な愛だったりするのかも……とか思ったりもする。

あ、基本的に「フェリックスとドミトリーに明確な同性愛関係はない」ていう前提で見てます。史実はガッツリできてるけど、この作品ではあくまでフェリックスの一方的な愛情(ドミトリーは友情)。

そういうわけで、トップコンビ+二番手でこれだけ妄想できる作品が傑作じゃなかったら何なの。何回見たら、お腹いっぱいになれるの。飽きる気がしない。ヤバイまた東京飛んじゃう貯金減っちゃう……ていうのが、初見の総括です。あと3枚しかチケット確保してないんですけどね。

どうしよう(ホントにどうしよう)。

月組大劇場公演「All for One」/2回目

(A席1階28列下手側)

一度目面白かったところは面白く、歌詞は初見時よりもキツく、相変わらずアトスもマザラン枢機卿も適当な二回目。三回目も見に行こうかな……と前向きに悩む良作(まあチケットがないわけですが)。全体的に台詞のタメが増えてたかな。ノリに慣れ始めた客席がドッカンドッカン受けるので、身構えずに笑いながら見れてすごく楽しかった。

細かいツボは以下箇条書きに。

・護衛隊の輝月ゆうまがびっくりするほど霧矢大夢。だけど背が高くて身体が大きいのでなんか不思議な感じ。そういえば「メリーウィドウ」「A-EN」でも「霧矢大夢だ!」って思ったんだった。好きです。あと護衛隊といえば、千海華蘭。常にムチャクチャ悪いそうな顔をしてて、ちょっと面白かった。

・リュリが可愛い。憧花ゆりのが可愛い。ボーフォール公もたまに可愛い(!)

・月城かなとって本当に陰陽でいうと陰の人だなあ、と思いながら見てる。これだけ陰鬱な陰のあるスターって珍しくないですか? しかもそれがあんまり耽美な陰でもなくて、どっちかというと湿り気を帯びたような陰気さ。むちゃくちゃニッチなツボをついたはまり役があるような気がするんだけど、思い付かなくて悶々としてる。

・デュエットダンスで愛希れいかを床でくるりと回すところがすごいツボ。

・相変わらず紫門ゆりやが素敵にたらしな優男。あの人を見ると、いつも「この人絶対女きょうだいに囲まれて育ったよね」って思うんだけど、フィリップは意外とそうでもなかった。お兄ちゃんだった。優しげに微笑みながら悪辣の限りを尽くすような非道極まりない役を一度やって欲しい。絶対に似合うから。あ、見た目は完全無欠のキラキラ貴公子モードでお願いします。

月組大劇場公演「All for One」/1回目

(B席2階11列下手側)

「スカーレットピンパーネル」からシリアス成分を全部引っこ抜いてお笑いと漫才をぶち込み、ハーレクイン成分を少女マンガ成分に置き換えて歌詞に謎の教育成分を振り掛けたら、多分それが「All for one」。そんな痛快冒険活劇アンドラブコメディ。すごくよかった。脚本家小池修一郎もたまにはやるやん、ていう謎の上から目線モード(演出家小池修一郎は信頼してるけど、脚本家小池修一郎への信頼感は皆無だからね仕方がないね)。

愛希れいかのルイ十四世がさすが元男役の少年ぷりで、若い女の子が無理していることが分かりつつ、なおかつ王の風格がちゃんとある(あと、若ぶっても変にカマトト臭くならない)。若くて頼りないけど、高貴で位が高い。「控えよ」っていう声がヒステリックに響かなくてすごい好き。だからこそ、二幕でダルタニアンとの主従関係が薄れたのが個人的には惜しい。

珠城りょうは尻に敷かれててもかっこいい人じゃないですか。むしろ尻に敷かれた方がかっこいい感さえあるじゃないですか。なので最後までルイーズ上位の関係でよかったと思う。尻に敷かれてても、珠城りょうはちゃんと逆襲するし(強引にキスしときながらすぐに我に返って心底申し訳なさそうに謝る、というのは新鮮でいいキャラクタだった)(そしてその強引さにときめく愛希れいかが可愛い)。

無骨感、が珠城りょうの売りなのかなあ。基本的に忠誠の人なんだけど、時折暴走する……みたいなの似合うよね。ジゴロの役とかは間違ってもさせちゃダメなタイプ。若さがいい感じに抜けて来た頃に、堅物軍人と王女様(相手役の色によっては町娘でも可)とかそういうベタなラブコメが見たい。

美弥るりかは得意の?女たらし。えらく歌が上手く聞こえて驚いた。いや、元々下手な人ではないと思うんだけど、歌い方にもう少し癖があると思ってた。芝居にも癖があると思ってた。今回、妙に素直で、個人的には嬉しかった。何だろ、純粋に役が色物寄りじゃないから……?(十分色物では?)

髭を付けた宇月颯が超絶男前。ちゃんと年長者感がある(これは美弥るりかが若すぎて怖いともいう)。ただ、「さすがはアトス。緻密な作戦だな」みたいに讃えられる割に出たとこ勝負過ぎる作戦なのはどうでしょうねえ……。「アトスにしてはいくらか投げやりな作戦だな」くらい言わせておけばいいのに。

暁千星は初見が多分メリーウィドウで、めちゃくちゃ下手だなこの子、って思った印象が強いんだけど、フォルスタッフ見たら普通にキラキラしたロミオやってたし、もはや全然下手ではなかった。まあ、見たまんま若いんだけど、今回はそれが役にあってる。結構好き。

あとは、中央に一樹マザランと憧花アンヌを配しているのがよかった。話が軽くなり過ぎない。

ジョルジュはもっと大柄で華やかな子を配しても(そう演出しても)良かったんじゃないの、と思わなくもないけど、この方が対比が映えるという判断なのかな。演技がよかった。
沙央くらまがびびるほど美しくて、イイ役。牢屋に入れられた後の捨て台詞大好き。スカート剥ぎ取って踊るとこだけ、ちょっと下着感あり過ぎて痛々しいのでもうちょっと丈伸ばしてあげて欲しい。足を曝け出す=胸を出すよりもはしたない、くらいの時代では?

ちょこちょこ不満はあって、最大の点は「あなたのきょうだいを見つけ出したら、あなたは自由だ」のくだり。やたらと繰り返されるんだけど、なんかちょっと、兄弟に王としての義務を押し付ける感を感じてね。生まれてすぐに捨てられて、王族としての権利も与えられずに育った子に王の義務を押し付けるの?義務と権利はバーターでは?って思っちゃう(だからできれば、もう少しマリア・テレサに一目惚れするとかそういう救済措置が欲しいし、ダルタニアンもちょっとくらい配慮しようぜルイーズも悩もうぜって思う)

あと、やたらと「All for one」と繰り返される銃士隊のスローガン。背中がちょっと痒い。「一人は皆のために~♪」っていう歌詞で歌っちゃうのはどうですかね……個人的にはちょっと……

でもまあ、目立った不満はそれくらいで、あとは笑って流せる。やっぱりコメディってその点がいいな、と思うわけです。チケットと有給休暇が許す限り通いたい、が、次が朝夏まなとの退団公演なのでそこらへん考慮して控えめになるかもしれない。

花組大劇場公演「邪馬台国の風」「Sante!!」/1・2回目

久々に宝塚らしい、頭おかしい感じの駄作を見て感動しました。嘘です。
そういえば脚本誰だろ→中村暁ってあたりで大体察したし覚悟はしたんだけど、最近良作続きで……というか良作しか見に行かない怠惰なヅカファンやってたので、予想以上のダメージを受けた。

それでもまあ、致命傷を負わなかったのは、曲がどれも好きな感じだったのと、明日海りおの美しさのおかげかなあ。一回目はそれなりに楽しく見れた。「邪馬台国の風」のタイトル回収は結構好き。逢引に行って、「義務を果たせ」って迫る歌も好き。

二回目見たら、粗ばっかり目に入って発狂する気しかしなかったので、二回目は大人しくショーだけ見に行った。ショーはすごくよかった。ショーだけで3500円出せる。
 
駄作なりに芹香斗亜がグイグイ来てるなーってのを感じた一作でもあって、まあどうしようもない敵役を結構いい感じにやっててかっこよかったので嬉しかった。案外悪役似合うのねっていうのが嬉しい驚き。衣装も髪型も良かった。

柚香光は芝居だとやりどころのない役だけど、相変わらず美しい。あと、あの人ショースターの片鱗覗かせてない?贔屓目過ぎる?

明日海りおは宝塚特有の頭おかしい主人公でもなんか謎の魅力ある気がする。というか、頭おかしい役の時に妙な輝きが出てる。明日海りおの作品運の悪さは心配なんだけど、でもまあこの謎の魅力のおかげでギリギリ絶望せずにいられる……かもしれない。

ま、今回一番アレだったのは、ヒロインなんですけどね。脚本の段階ですでに電波なのに、仙名彩世との相性が悪過ぎて終始辛かった。ハイパー電波ゆんゆん。好きな娘役なので辛い。もっと落ち着いた役じゃダメなの?トップコンビが未亡人と若いツバメみたいな作品、やろう(提案)。

2016年のタカラヅカまとめ

宙組大劇場公演「Shakespeare~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~」「HOT EYES!!」/2回

脚本は破綻していないし、舞台転換はスムーズだし、ちゃんとミュージカルしてるし、登場人物が魅力的だし、衣装もいい。もしかして生田大和ってめちゃくちゃ有能なのでは……!って歓喜した作品。

朝夏まなとは思春期真っ盛りな青年の役を演っても「若ぶってる感」が皆無な辺り、持ち味が若いと思った。「くそくらえだ!」が可愛い。あと歌が上手かった(朝夏まなとって結構上手いよね……?)(音痴だから、イマイチ自分の耳が信用できない)(声がいいとすぐに騙される)。

沙央くらまのリチャードがすごくいい役で、真風涼帆はこっちの方がよかったのでは、って初見はちょっと思ったんだけど、ジョージはジョージで髭がかっこいいし、衣装もいいし、とにかく全編から脚本家の「作家とパトロン」萌えパッション電波をビンビン受信した(多分勘違い)ので、最終的に全肯定した(生田大和って有能な上に、ちゃんと(ちゃんと!?)コンビ萌えしている空気を感じるので、余計に印象いいところがあるかも)(「この人でこういう役(場面)が見たいの!」っていう熱意が脚本にあってくれた方が嬉しいという話)。

ショーは……「伶美うららを朝夏&真風で取り合うショーでよくある場面ねハイハイ」とかって見てたら、まさかの「朝夏まなとが真風涼帆をたらし込む場面」だったので二度見した、という記憶しか残ってない(しかもたらし込んだらすぐに興味を失う辺りが最高にワルイ男だった)。芝居は真風×朝夏だったけど、ショーは震えるほどに朝夏×真風。個人的には後者を推します(!)(でも前者は前者で新鮮味があって好き)(要するに朝夏&真風コンビが好き)。

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雪組大劇場公演「るろうに剣心」/1回

長編要約するときの小池先生にはまったく期待しないことにしているので、わりと「やっぱりな」って平常心で帰ってきた。銀英伝の時は期待してたので、「駄作一歩手前やんけ!」って発狂してたけど。今回は結構冷静。斉藤吉正か小柳奈穂子のがよかったんじゃない?とは未だに思ってる。むちゃくちゃかっこいい彩風斉藤に「悪・即・斬~♪」ってギャグのような歌で銀橋渡らせた恨みはしばらく忘れない(キャラ違いも甚だしい!!)。あと、望海風斗の役はちょっと酷すぎないですかねえ(悪役が全ての粗と帳尻を引き受けるのが宝塚とはいえ……)

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星組大劇場公演「こうもり…こうもり博士の愉快な復讐劇…」「THE ENTERTAINER!」/1回

記念すべき初・立ち見(多分)。「こうもり」は他愛もないコメディなんだけど、谷正純作品でこれなら、五体投地して感謝を捧げなきゃいけないレベルだと思う。結構面白かった。これで、男役礼真琴を初めて舞台で認識したような気がする(「ロスト・グローリー」の時はまだ分かってなかったし、「ナポレオン」も「黒豹」も見てないし、「ガイズ&ドールズ」は女役だったので)。

ショーが良かった。個人的に、2016年のNo.1ショー。

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花組大劇場公演「ME AND MY GIRL」/2回

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月組大劇場公演「NOBUNAGA<信長>」「Forever LOVE!」/1回

大野拓史は好きなんだけど、これは正直駄作では……。

織田信長の魅力が一切描かれてないので(そしてみんながあっさり裏切るので)、主人公の行く末に全く興味が持てないし、愛希れいかの扱いがびっくりするくらい薄いし、くの一ごっこしてるの何なのギャグなの(しかも一度も有能なとこ見せてないから、「お嬢様のごっご遊び感」が拭い切れない)(これが嫁って、信長無能説まである)。

全員裏切るシーンで感じる、「お館様、慕われてねえな」(一人くらい残れよ)感のどうしようもなさ。最後の最後まで、実は全員裏切ってない(裏切った振りをしろという命を受けている)と思って見てた(残念、全員全力で裏切ってるんだよなあ)(うーんこの信長に感じる無能感いかんでしょ)。裏切るのはいいけど、第三者に唆されて裏切るのはかっこ悪いことこの上ないと思うんですけど。

あと、「あの二人ならどちらが天下を取ってもうまくやるだろう」とか言ってるけど、あの二人どっちも次のトップじゃないからね。逆にしょっぱいんだよこの野郎!そうだよ、私は凪七瑠海にトップになって欲しかったよ!!でもまあ、珠城りょうはぐんぐん成長してる感ある。あと何作かあれば立派な二番手として、もう少し万全の体制で引継ぎできたと思う。やっぱり立場は人を作るんだろうし、珠城りょうはちゃんと抜擢に答えられる人なんだから、もう少し楽な体制でトップにして欲しかったなあ。責任ばっかり重くて、大変そうなんだもん。

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宙組大劇場公演「エリザベート」/1回

全然チケットが取れなかった上に、唯一取ってもらったチケットの日(お盆ど真ん中)に試運転が被るという人生最大レベルの不運が発生して、一回しか見れなかったのを未だに後悔している。見る前は、「今の宙組で「エリザベート」?イマイチ、役者的にも体制的にもハマらないのでは?」とかって思ってたのに、見たらびっくりするくらい良かった。マイベストエリザベートは2005年月組版で、それはやっぱり思い入れとかもあって今更変わらないんだけど、次点にガッツリ食い込んできた。トートに愛が溢れているという意味でいえば、方向性がちょっと似てるような気もする。

朝夏まなとのトートには、妙な熱さというかパッションがあって、「死は逃げ場ではない!」になんか納得感があった。あと、「連れて行って黄泉の世界へ♪」ってエリザベートがデレた瞬間に、「え、マジで?」って驚いてるみたいに見えるのが可愛い(わりと終始デレてる閣下だった)。また、実咲凜音が強いんだけどちょっと「キリキリ張り詰めている学級委員長タイプ」な感があって、二人の並びが結構お似合い。真風フランツは歌さえ大丈夫なら完璧に決まってるし、実際完璧だった。「嵐も怖くない」はちょっと不安定だったけど、それ以降は完璧。男前で優しげな皇帝陛下。「エリザベート」ってやっぱり面白い演目なので、「えぇぇ…またぁ?」って思わない程度に節度を保った間隔で再演して欲しい。

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星組大劇場公演「桜花に舞え」「ロマンス!!」/1回

サムライ・ザ・ファイナル!なのは、ラストサムライだと色々差し障りがあるからなの?っていう謎の初見感想。全編鹿児島弁(?)でセリフがちょいちょい聞き取れないし、理解するのに神経を使うのでちょっと疲れた。北翔&妃海カップルよりも、会津のお姫様&家臣コンビ(綺咲&礼?)の方が印象的だったのが、脚本的にアレな感じ。あと捨て置かれる奥さん……ここに妃海風を配役してはダメだったのか……。

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雪組大劇場公演「私立探偵ケイレブ・ハント」「Greatest HITS!」/1回

いかにもな正塚芝居。コメントし辛い。そこそこ無難な脚本とキャッチーな音楽さえあれば、演る人の魅力で何とかカバーできるのが宝塚だと思う(だからせめて無難な脚本を!)んだけど、正塚脚本だと癖のある台詞回しに縛られてなのか、そういう演技指導なのか、脚本以外の魅力があんまり出てこないような気がする(でもって今回、その脚本に大して魅力があるわけではない、ので……)。

まあ、日本物が多かった雪組で普通のスーツ芝居が見られたのは嬉しかったんだけど。

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月組バウホール公演「FALSTAFF」/1回

花陽みらの最後なんだから見なきゃですわよ……って、覚悟を決めて谷正純作品に臨んだら、普通に面白かったので、喜ぶより先にうろたえた。でもって、若手ばっかり出ている(多分)割に、皆上手くてびっくりした。特に、マーキューシオ!(蓮つかさの名前をこの作品で覚えた)(顔はまだちょっと怪しい)。星条海斗って隔絶感のある(いい意味でも悪い意味でもなんか周囲に全然埋没しない)人なので、”フォルスタッフ”という役はピッタリだった。あとジュリエットが可愛い。憧花ゆりのはさすがの貫禄。そして宇月颯がめちゃくちゃ男前。

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花組大劇場公演「雪華抄」「金色の砂漠」/2回

妙にアルスラーン戦記を連想した。多分舞台設定と、タルハーミネという名前と、「夫を殺した男の妻になった王妃」という設定のせい(「アルスラーン戦記」はちょっと宝塚で見たいけど、主役が少年だから多分無理ですね……)。

絶対に幸せになれない(愛する女に自分という存在を認めさせたいギィと、奴隷を愛する自分を認められないタルハーミネは、どう足掻いても平和な終着点を共有できない)ことが最初からビンビン伝わってくる芝居で、ただひたすら燃え上がり崩壊しながら破滅に向かう二人を眺め続ける100分が何だか楽しかったし面白かった。王女と奴隷という立場で出会ったからこそ恋に落ち、同時に王女と奴隷の身分である限り(身分違いとかそういう外的要因ではなく、本人たちの心情の問題として)絶対に結ばれない。ギィとタルハーミネはそういう風に見えた。あと何回か見れたら、もうちょっと見方が変わったかも?と思うので多少悔いが残る。

最後のシーンが開幕に繋がるのがすごく好き。あと、「あなたは死ぬべきだった」(多分合ってる)ってギィが母に詰め寄るところ。「いつもあなたはそうして震えている」(大体合ってる)という台詞。最後、砂漠で二人倒れる場面。ギィとタルハーミネに見えるフィナーレのデュエットダンス。踏み台にする演出はちょっと引いたけど、常識担当柚香光(光り輝くほど美しい)が「正直引くわー」ってフォローしてくれるからセーフ(上田久美子ってそういう抑制効いてるから信頼してる)。

そういえば、柚香光がフィナーレで銀橋から落ちるのを見たのは確かこの公演……だった気がする。銀橋から落ちる人を初めて見た。

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10公演/13回

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わりと低速まったりモードで終わった2016年。基本的に友の会か公式でしかチケットを確保しない(ぴあのプレリザーブとかカード会社貸切をちゃんとチェックしない)人間からすると、チケットが取り辛くて参った。とりあえず一回見て、が100周年以降全然通用しない。「金色の砂漠」と「Shakespeare」はあと何回か見たかったなあ(あと「エリザベート」もルドルフコンプリートしたかった)。

 

花組大劇場公演「ME AND MYGIRL」A/Bパターン

(5/7 11時公演)2階3列下手側:Aパターン
(6/4 11時公演)2階10列上手側:Bパターン

花組梅芸版を死ぬほど(といっても四回くらい?)見たので、あんまりノリ気じゃないまま、「一回くらいは見ておくかー」くらいの勢いで行ったら、何故かめちゃくちゃツボにはまって、二回目(Bパターン)のチケットを確保してニコニコで帰宅することになった。なお、二回目で無事明日海りおに本格的に落ちて(あれえ?)、13000円のDVD-Boxを衝動買いした模様。こういう時に、13000円を惜しまないくらいの金銭的余裕は欲しいと思って常々生きているので、それはいいんだけど、前触れなく明日海りおに落ちた自分にびっくりした。いや、前々から美貌の人だとは思ってたけど。思ってたんだけど。

てことで、安定のミーマイ。
明日海りおは貴族的な持ち味(しかも完全な”陽”の人ではない)なので、ビルはどうだろうと思っていたんだけれど、それが逆に「隠し切れない血筋の良さ」感に寄与していて、非常に良かった。色々下ネタを飛ばしても、総じて下品になり過ぎない。あと、舞台年齢が若いのがいい。ビルって青年になりかかった少年の役だもんね。
完全に”陽”じゃないあたり、私が明日海りおに一方的に見出して勝手に愛しているヤンデレ風味(!)がちょいちょい顔を出していて、とても良かった。サリーが姿を隠して以降の病みっぷりが容易に想像できる感じ。納得感がある。

花乃まりあは明日海りおとは反対に、どっちかというと高貴な役が似合わないタイプなので、サリーは全く問題なく。歌声がまろやかという人でもないので、私がいつも思う、「サリー歌ったら令嬢やん!」問題も発生せず。頭の回る下町娘で、(今までは結構育ちの割にのんびりしたところのあるビルを引っ張ってきたのに)ビルはあっという間に立派な紳士になっちゃって、最早自分の傍にいるにはふさわしくなくて、それが分かるだけに(分かる賢さがあるだけに)色々苦しくなってくる、というのがよく分かるサリー。好き。

でもって、そんなサリーの考えをビルは分かってる(だってビルものんびりだけど結構頭回るからね)し、だから彼女を愛している。一幕の終わり、「彼女は僕のガールフレンドの、サリー・スミスです」の台詞に、今回めちゃくちゃぐっと来た。いやあ……ビルってかっこいい役だったんだなあ。

てことで、ビル&サリーに関しては今回全肯定。ぶっちゃけ、私的ベストキャストかも(霧矢ビル・羽桜サリーも好きだけど、こっちは映像でしか見ていないので、ちょっと分が悪い)。

キャスト的には、Aパターンの方が好み。ジェラルド&ジャッキーがね、とにかく良かった。

ミーマイで一番難しい役って、ジェラルドじゃないですか。特に、そこそこ学年の上がった男役にとっては。前回の愛音羽麗は、あの学年なのに普通にジェラルドやってたけど、でもあの人結構特殊なタイプだしね(愛音羽麗って多分、ジェラルドもジャッキーもジョン卿も、多分ビルもサリーも普通にできたと思う。同時期に。怖い)。

水美舞斗はまだ若くて、なおかつ持ち味的に「育ちのよい、ちょっと気弱なボンボン」がはまる。当然、ジェラルドもはまってる。そして柚香ジャッキーがこれまた、押し出しの良い、完璧なブロンド美女!私の好きな、「高慢で美しい年上の従姉と、押しの弱い(従姉に強く出られない)従弟」風のジャッキージェラルドで、もうホント好き。

芹香斗亜のジェラルドはそこらへん、「ジェラルドって難しいよね」感溢れてて、あーもう若さだけでジェラルドを演れるほどこの人も若くはない(幼くはない、っていってもいい)んだなあというのが、逆に嬉しい。あとね、ジョン卿がよかった!マリア叔母様も若いので、全然違和感なく、チャーミングなおじさま。しかも髭が似合う。

明日海りおがねえ、「あなたは別ですよ、ジョニー」って頬にキスする場面あるじゃないですか。あそこヤバイ。ホントヤバイ。すっごいニヤニヤして、どうしようもなかった。

マリア叔母様はA/Bで芝居が全く違って、桜咲彩花マリアは「しっかりものの末っ子」、仙名彩世マリアは「愛された末っ子」風。どちらかというと、オーソドックスなマリア叔母様なのは、Aパターンかな。Bパターンのこういう、ちょっとおっとり型(いかにも育ちのいい貴族婦人)なマリア叔母様は、初めて見た気がするけど、これはこれで悪くない。マリア叔母様って、敵役というわけではないもんね。

あとは……ミーマイ見る度に言ってる気がするけれど、お屋敷の厨房の場面がホント好き。曲もセットも衣装も照明も。ギャグだけ……ギャグだけ刷新してもらえませんかねえ……(どてカボチャだけでいいから……)。ていうか、そろそろ言葉遊びのところは全面的に改訂してもいいんじゃない?

ヘザーセットとビルの関係が毎回ぐっと来る。最後にね、ビルが「チャーリー」って呼ぶんだけど、ああ、ビルはランベスに帰る気でいるけど、もう立派に世継ぎになってるんだなあ、って一番あそこで思う。ホント好き。